セーヌ河畔


コレクション

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ジャンル

絵画(油彩画等)

作者名

藤島武二
FUJISHIMA Takeji

制作年

1906-07(明治39-40)年

材料

油彩・キャンバス

寸法

37.5×53.1

署名

左下:T.Fudjishima.

寄贈者

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来歴

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初出展覧会

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作品名欧文

Riverbanks of the Seine
関連資料

解説

夏の夕暮れに向かう景色だろうか。ほのかに赤い空の向こうに明るい雲がのぞいている。刻々と暗闇に向かう短時間の戦いに、藤島は得意の技術で応じている。したの絵具がまだ乾かないうちに別の絵具を上に塗り、複雑な色彩を生み出す技法。一方、下の絵具が指で触ってほぼ乾燥したことを確認後、別の絵具を上に塗り、下の絵具が透けてみえることで色味に深みが生まれる技法。画面の半分以上も水面が占める大胆な構図のなかで、家々や森などが水面へと的確に反映され、河の流れる速度までもがその描写によって十分に想像出来る。三重県尋常中学校で教鞭をとったこともある藤島は、その後日本の洋画界になくてはならない存在となったが、留学した時期は意外と遅く三十八歳のときであった。幸いなことに、明治三十九年のこの時期、ヨーロッパではマティスやピカソらが新しい芸術を発表した。その場に居合わせた藤島の芸術理解は広がり、その後の国内の若手芸術家のよき理解者ともなった。藤島の画風は一見堅実でありながら、鮮やかな色彩と筆のタッチに織り込まれた精神性の高さは、まさしく留学の収穫だったのだろう。
(県立美術館学芸員・田中善明)

展覧会歴

藤島武二遺作展(東京都美術館 1943)
巨匠シリーズ・藤島武二展(新宿・伊勢丹 1961)
生誕百年記念 藤島武二展(ブリヂストン美術館 1967) no.16
藤島武二展(日動画廊 1977) no.9
没後40周年記念 藤島武二展(三重県立美術館、神奈川県立近代美術館 1983) no.18
パリを描いた日本人画家展(カルナヴァレ美術館;パリ、神奈川県立近代美術館、三重県立美術館 1985-86) no.12
藤島武二展(京都市美術館 1987) no.26
印象派と近代日本絵画展(長野県信濃美術館 1989)
藤島武二展(東京都庭園美術館、高岡市立美術館、愛知県美術館 1989) no.13
藤島武二と9人の若き洋画家たち(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 1993) no.6
藤島武二と新制作派のパイオニアたち展(アトリオン美術展示ホール;秋田市 1994) no.1
日本洋画のれきし 三重県立美術館コレクションによる(茨城県近代美術館 2000) no.14
美術を楽しむ散歩道―三重県立美術館名品展Ⅰ 日本洋画の楽しみ(川越市美術館 2003)
川喜田半泥子物語―その芸術的生涯―(愛知県陶磁美術館 、石水博物館、あべのハルカス美術館 2014-2015)
藤島武二展(練馬区立美術館、鹿児島市立美術館、神戸市立小磯記念美術館 2017)

文献

岩佐新『藤島武二画集』(藤島武二画集刊行会 1943) no.6
隈元謙次郎『藤島武二』(日本経済新聞社 1967)
『アサヒグラフ別冊美術特集 日本編65 藤島武二』(朝日新聞社 1990年) no.12
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