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美術館 > 刊行物 > 学芸室だより > 新聞連載 > 「「クール・ジャパン」に期待」 カフェ日和第27回 井上隆邦 2013.4.6

 

 「クール・ジャパン」に期待

井上隆邦

日本独自の文化は海外で高い評価を得てきた。百数十年前ヨーロッパで花開いた「ジャポニズム(日本趣味)がその嚆矢だろう。第二次大戦後は黒沢明、小津安二郎、溝口健二といった映画監督の作品が注目された。最近では村上春樹の文学作品、アニメや秋葉系ファッション、AKB48などの人気が高い。

日本文化を積極的に海外へ輸出しようというプロジェクト「クール・ジャパン」が経産省の音頭でスタートしている。付加価値の高い日本文化こそ重要な「輸出品目」と考えている筆者にとっては、紛れもなく共感できるプロジェクトだ。

 「文化」の輸出で実績を上げている国といえばフランス。エルメスやルイ・ヴィトンを引き合いに出すまでもない。またこの国での最大の稼ぎ頭は何と言ってもエッフェル塔であろう。この塔が持つ魅力的な姿は、様々なメディアを通じて繰り返し全世界に配信されており、その結果膨大な数の観光客がパリを訪れている。ある試算によればエッフェル塔の観光面での資産価値は四十二兆円にのぼるとか。

山梨県・甲府市に「印傳屋」というお店がある。なめした鹿革の上に伝統的な文様を施した財布やバックなどの製造・販売で有名だ。文様を施すに際して三重県ゆかりの伊勢型紙が使われている。この「印傳屋」が、三年前からニューヨークに進出中だ。世界展開の第一歩だという。まさに「クール・ジャパン」を先取りした取り組みではないだろうか。伝統工芸の高い技術に裏打ちされた同社の製品。ニューヨークでの成功を期待しつつ、「印傳屋」の果敢な挑戦に拍手を送りたい。

(朝日新聞・三重版 2013年4月6日掲載)

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