型紙と西洋美術 関係探る
井上隆邦
着物の生地に文様を染める時に使う「型紙」が、西洋美術に及ぼした影響を探る「KATAGAMI style」展が、八月下旬から県立美術館(津市)で始まる。この企画展の準備には、四年もの歳月を要した。
展覧会の骨格となる調査研究活動を担当したのは、日本女子大の馬渕明子教授を代表とするプロジェクト・チーム。当館からも、生田ゆき学芸員が参加した。
一連の調査研究活動を通じて、様々なことが明らかになった。十九世後半から二十世紀にかけて型紙が何千何万という単位でヨーロッパなどに渡ったこと、その繊細で斬新なデザインがかの地の画家や工芸家、デザイナーに大きな影響を与えたことなど、収穫は少なくなかった。
こうした成果をもとに企画した今回の展覧会。型紙は無論のこと、その影響を受けて制作されたヨーロッパ側の絵画や工芸品など四百点余りの作品を展示する。国内外七十か所から集めたものだ。
展・莱の準備に際して、生田さんはポーラ美術振興財団などのメセナから援助を仰ぎ海外調査を行った。“流出”した型紙を所蔵している美術館では専門家がいないケースも多く、調査の合間を縫って、自ら整理や分類まで手掛けた。ロシアでは、急遽講演を依頼され、終了後には質問攻めにあうという一幕もあった。
型紙は、鈴鹿市の白子や寺家との関係が深く、江戸期にはこの地の型紙が全国各地に流通するなど、産業としても隆盛を極めていた。企画にあたり、こうした歴史を念頭に置いたことは言うまでもない。開催まであと三か月。生田さんはいま、最後の追い込みに余念がない。
(朝日新聞・三重版 2012年5月26日掲載)