寝床ぬくぬく湯たんぽ快適
井上隆邦
一月から二月の深夜と早朝は「冷え込む」という表現がぴったりだ。特に、当地にあっては「鈴鹿おろし」が骨身にしみる。毎年のことだが、寝床の防寒対策では苦労している。
電気毛布は確かに便利だが、一晩中使うとなると厄介な問題もある。寝床に入った直後は快適なのだが、深夜、電気毛布が熱くなりすぎて、突然目を覚ましてしまうことがある。一度目が覚めると寝付くのに時間がかかる。どうも電気毛布は、筆者との相性があまよくない。
3年ほど前、こうした悩みを美術館のボランティア、島信子さんに打ち明けたところ、十日程して思いがけないプレゼントが届いた。湯たんぽだった。プラスチック製のもので、実に軽く、使い勝手もよい。湯たんぽと言えば、昔は金属製のものが一般的だったが、今では改良が進んでいる。
湯たんぽの良さは、何と言ってもゆっくりと体全体を暖めてくれることだ。そこが電気毛布と違う。眠りが浅くなって、目覚めが近づく明け方頃になっても、足元は暖かく保たれている。まるで足湯に浸かっている気分だ。つい寝床から出るのが億劫になる。
扱いが楽なのも、湯たんぽの特徴だろう。お湯を注ぐだけだから、カップ麺を準備するのとさして変わらない。湯を注ぎ、蓋を閉めれば、準備完了。後は寝床に仕込むだけでいい。
間もなく東大寺でお水取りが始まり、春の訪れもそう遠くはない。とはいえ、この寒さは未だ続きそうだ。当分、湯たんぽが手放せそうにない。何の変哲もない発明品だが、これを思いついた先人の知恵には改めて敬服させられる。
(朝日新聞・三重版 2012年2月11日掲載)