ごあいさつ-元永定正さんを偲んで
去る10月3日夜、病気治療中であった三重県伊賀出身の画家元永定正さんが88歳で死去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます。
1950年代に始まる抽象絵画、立体、パフォーマンスなど多岐に渡る元永さんの独創的な活動は、日本国内だけでなく海外でも高い評価を受けてきました。三重県立美術館はそうした元永定正さんの作品を開館以来継続的に収集し、その間1991年と2009年には二度にわたって個展を開催しました。また、子どもたち対象の教育活動にも元永さんからご支援を得るなど、元永さんと当館との関係には浅からぬものがあります。
元永さんは20代を終える頃伊賀を後にして兵庫県に移り、以後関西を活動の拠点としてきました。しかし、生涯を通じて元永さんは故郷へ深い愛着を寄せられました。伊賀市内にアトリエを構えて大作を制作された他、三重県の地震体験車やポスターのデザイン、三重県美術展覧会の審査、県内各地での講演等々を通じて、三重県の文化と教育にも多大の貢献をされました。元永さんは、三重県を代表する芸術家でした。
このたびの訃報を受けて、当館では元永さんのすぐれた芸術を振り返り、あわせて多くの人々から愛された気さくで飾り気のない、人間味豊かなお人柄を偲んで、この稀有な芸術家を追悼する特集展示を行うことに致しました。
ご紹介するのは、1950年代、元永定正さんが初めて抽象画を描き始めた頃の作品に始まり、海外で高い評価を受けた絵具流しによる大作、1966年から翌年にかけてのニューヨーク滞在中に始まるエアブラシによるユーモラスな雰囲気漂う絵画、1990年代以降の絵具流しと「かたち」とを組み合わせた作品など約25点です。お酒と演歌、ユーモアを愛し、何よりも芸術創造を片時も忘れることのない人生を送られた元永定正さん。敬愛すべき元永さんを偲びつつ、本展をご鑑賞いただければ幸いです。
最後に、元永定正さんがご生前当館と三重県にお寄せいただいた様々なご支援に改めて心からの謝意を表するとともに、重ねてご冥福をお祈り申し上げます。
2011年10月
三重県立美術館