福田繁雄(1932-2009)
《使えない食器(七つ注ぎ口のあるポット)》
1981年
陶器 11.5×21.5×20.5cm
二戸市シビックセンター福田繁雄デザイン館所蔵
© Shigeo Fukuda
© Photo DNP artcom
cat.no.282
一九六〇年に東京で世界デザイン会議が開かれ、イタリアのデザイナー、ブルーノ・ムナーリも来日した。彼はその折り、文字盤のない時計を発表する。それに対して日本のデザイナーたちは、単なる遊びではないかと反発したという。しかし福田繁雄は、ムナーリの姿勢にこそ共感した*。
ムナーリや福田が重視した〈遊び〉は、ある意味で、機能が形態を決定すべきだという機能主義を相対化するものと見なせるかもしれない。
本作品は、福田のそうした姿勢を示す典型的な例だ。同系列の作品に《環境汚染》と題された連作がある点と照らしあわせれば、ここに重い意味づけを読みこむことも不可能ではない。
ただし、作品の表情はあくまでとぼけたものだ。多くの乳房を有する古代の豊饒の女神像を連想することもできよう。むしろ、相反する反応を許容するだけの軽快さこそが、この作品の身上なのだろう。
(石崎勝基)
中日新聞2011年8月7日
*『タイムトンネルシリーズ Vol.27 福田繁雄 ハードルは潜kuguれ』(ガーディアン・ガーデン、クリエイションギャラリーG8、2008 )、p.19など参照。