福田繁雄(1932-2009)
《SHIGEO FUKUDA IMAGES OF ILLUSION 1984》
1984年
シルクスクリーン
103×72.8cm
DNP文化振興財団所蔵
© Shigeo Fukuda
© Photo DNP Foundation for Cultural Promotion
cat.no.114
二人の人物が腰かけている。しかし二人の配置がおかしなことになっている点に気づくのに、さほど時間はかかるまい。二人が腰を下ろしているのは白い四角の表なのか裏なのか。少なくとも重力に律せられた地上においては、こんなことはありえない。
三次元の現実では実現しえず、平面上でだけ成立する錯視空間。トリック自体は単純だ。しかしトリックとわかったからといって、奇妙な感触は薄れないのではないだろうか。
この点を活かすために、福田はデザインを厳格なまでに整理している。人物は記号化されることで、各自の個性ではなく、それが置かれた状況に目を向けさせる。
暗い青との対比で発光するかのような輪郭の赤。中央の四角と上下の文字は、うがたれた虚のごとき白。三つの色が干渉しあうことで、重力から解放された空間が生じるのだ。
(石崎勝基)
中日新聞2011年7月31日