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友の会だより文集抄

表紙の作品解説

橋本平八
《石に就て》


1928(昭和3)年
木、彩色
28.6×18.2×19.6p

 

 橋本平八の《石に就て》は、自然の石をモデルにした異色の木彫だ。このような作品をつくった彫刻家が橋本の他にもいるのか、私は寡聞にして知らない。

 「石」が主題素材が石というならば、それは突飛なことではない。しかし、この作品で作者は石の姿形を緻密に木に写し取っている。自然の石を木で表現することに、橋本平八はどのような意義を見出していたのだろうか。

 橋本は、この作品について「仙を表現するもの」と記している。橋本がいう「仙」とは何だろうか。「仙」について平八は様々に説明しているが、それは「自然界に潜む人智が及ばない聖なるもの」といえるようだ。そうした聖なる力を橋本は彫刻で表現したという。また、橋本は「仙」を表現するためには、特別の石である必要があるとも述べている。この作品を制作するにあたり、彼は収集した二十数個の石から一つを厳選して《石に就て》のモデルにしたという。

 また、木彫の木取りは木心を外して行われるのが通例だが、橋本平八は木心を込めた木取りをする場合が多く、この作品も例外ではない。こうした木取りも、自然が持つ特別な力を尊重する橋本特有の思想の現れである。

 《石に就て》には石の「仙」だけではなく、用材である楠の「仙」も表現されていると見ることもできる。ここでは、主題と素材とが不可分に融合している。しかも、この作品に投影されているのは橋本のアニミズム的な自然観だけではない。彼の仏教信仰もこの作品に影を落としている可能性が高い。そうした複合的な平八の思想と造形力とが一体となってこのユニークな彫刻が生まれたのだ。

(毛利伊知郎)

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