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美術館 > コレクション > 所蔵品解説 > 橋本平八 《猫A》 1922年 解説

橋本平八 《猫 A》 1922年

 橋本平八(1897-1935)

猫 A

1922(大正11)年 

H35.0cm

 

橋本平八 《猫 A》 1922年 

 

 橋本平八は、一八九七年(明治三十)年に、現在の伊勢市朝熊町で生まれた。彼は、日本の伝統的精神世界を作品にいかに表すかということを考え、また、彫刻によってのみなしえる立体的な原質を完全に備えた、より善き一つの作品を求めて模索し続けた彫刻家である。
 「猫A」は彼の初期の作品で、日本美術院彫刻部研究室に入ることが認められた出世作である。彼はこの作品について「自分の肖像であり、身構え、心構えであり、技巧の上には方式である」と述べている。
 彼自身にとっても、その後の彫刻家としての方向性を指し示す重要な作品であったようである。この作品は、彫刻作品のもつさまざまな魅力的な要素が感じられ、また、彫刻的価値を求める彼の姿勢もうかがえる。
 ぱんと張ったお尻(しり)から背中にかけての塊、それに対するかのような前足のえぐれたライン、中身がぐっと詰まったかのような頭部が、緊張感をもって見事に構成され、高さ三十五センチほどの小品であるにもかかわらず、どっしりとした存在感を湛(たた)えている。
 さらに、ピンと立った耳や一点をしっかりと見つめた目などからうかがえる表情には、彼の生き方への決意が表されているように感じられる。(近藤真純 中日新聞2000年2月17日)

 


 大正から昭和初期にかけての彫刻界で異彩を放った橋本平八は、40年足らずの短い生涯の内に、猿や猫、兎など身近な動物を主題にした作品を数多く手掛けた。「猫 A」は、そうした平八の動物彫刻の代表的な作品のひとつ。大正9年(1920)24歳で郷里の伊勢をあとに上京し、彫刻家佐藤朝山の弟子となった平八が、上京2年目に、初めて再興日本美術院の展覧会に出品したのが、この「猫 A」であった。
 耳をぴんと立て、前足を揃えてすわる猫の姿を写したこの作品を、平八自身は彫刻の技術的な修練の結果を示すものと考えていたという。
 「猫 A」やこれに続く「猫 B」は、直接的には、密度の高い動物彫刻を得意としていた師佐藤朝山の作品から強い影響を受けていると思われるが、そこには既に、後の平八作品に一貫して流れる、対象の形態に対し徹底して肉薄する作者の姿勢を見ることができる。(毛利伊知郎)125の作品・三重県立美術館所蔵品 1992年

 

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