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美術館 > コレクション > 所蔵品解説 > ゴヤ 《アルベルト・フォラステールの肖像》 1804頃 解説

ゴヤ 《アルベルト・フォラステールの肖像》 1804頃

 ゴヤ、フランシスコ・デ(1746 スペイン -1828)

アルベルト・フォラステールの肖像

1804頃 油彩・キャンバス

45.9×37.5cm

(財)岡田文化財団寄贈

 ゴヤ《アルベルト・フォラステールの肖像》 1804年頃

 

 今日、画家としてのゴヤの名声を高めているのは、彼の特異な想像力の世界を示す「黒い絵」と呼ばれるシリーズである。しかしながら、ゴヤが自らの内なる声にしたがって絵を描き始めるのは、実はそんなに早くはない。ゴヤがそれ以前に、肖像画を中心とする数多くの注文制作をこなす宮廷画家であったことを忘れることはできないのである。
 この作品も宮廷画家としての仕事の中で描かれた肖像画の一つである。あまりにも変哲のない作品に見えるが、ここにもゴヤの冷静かつ深みをもった人間観察の眼を見てとることができる。人間の内面に向けられた彼のまなざしは、現実に対するそれと同質であり、絵の具を自在に駆使することのできる表現力が、見たものを確かな実存感で画面に具現させるのである。 (土田真紀 中日新聞 1996年11月8日掲載)

 


 

  「写真はうそをつかない」のが真とすれば「写真写り」の「良さ」も「悪さ」も生じないはずだ。しかし、我が身をとらえた写真を前にした決まり悪さは、単に身のほどしらずの自己愛の裏返しと片付けるには、あまりに普遍的である。 確かに写真は瞬間を封じ込めるかもしれない。が、それはほんの一つの局面にすぎないのだ。他方、一見リアルさにおいて不利と思われる絵画は、モデルと同じ時間を共有することで、一筆ごとに画家は自らが受けた印象を補強し、時には軌道修正を行っているのだ。二百年前にゴヤが残した肖像画が、単にフォラステールの容ぼうを忠実に伝えるにとどまらず、彼の虚栄心や野心までも透かして見せてくれるのは、描写の力量もさることながら、何よりもゴヤの人間観察の鋭さによるところが大きい。近年の研究により、モデルの出自や人となりが明らかにされたが、驚くべきことに、この絵から受ける印象を越えるものは何も無いのだ。(生田ゆき 中日新聞2003年12月8日掲載)

 

 

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