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美術館 > 刊行物 > 所蔵品目録 > ドーミエ《古代史 23 うるわしのナルキッソス》 三重県立美術館所蔵作品選集

作者名50音順一覧

ドーミエ《古代史 23 うるわしのナルキッソス》

〔72〕
オノレ・ドーミエ(1808-1879)
《古代史 23 うるわしのナルキッソス》
1842年
リトグラフ・紙
33.2×24.6cm

Honoré DAUMIER (1808-1879)
Le beau Narcisse(From Histoire ancienne)
1842
Lithograph on paper

ナルシシズムと聞けばすぐに自惚れや自己愛に変換できるほど、日本語にもなじみの深い単語である。その由来が鏡に映った姿を我と知らず恋焦がれたギリシャの美青年であることも、正確な典拠はしらずとも、耳学問で仕入れた人は多いだろう。オヴィデウスの『変身物語』によれば、ナルシスには一途な思いをかけてくれるエコーという少女がいたが、けなげな愛を無残に足蹴にしてしまう。神の怒りを買った美貌の若者は罰として水に映った自らの姿を愛する運命となるのだ。

もちろん、ナルシスの自らの容姿を誇る高慢さは現代の「ナルシシズム」に通じるが、ここには愛についての悲しいすれ違いがある。エコーは口が災して話しかけられる最後の一言しか繰り返せない。ナルシスは真の愛を知らず、決して報われない空蝉の美に身をやつす。エコーは木霊の響きに、ナルシスは水仙の花に姿を変え、二人は結ばれることはない。

ドーミエの版画ではお得意の皮肉におかしみと悲しさが全開であるが、たとえば、画面奥の洞窟からエコーの叫びを、手前の淵に水仙の芽生えを見るのは、少々ロマンチシズムが過ぎるであろうか。

(生田ゆき)



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