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美術館 > 刊行物 > 所蔵品目録 > 三重県立美術館のコレクションについて 白石和己 三重県立美術館所蔵作品選集

三重県立美術館のコレクションについて

館長 白石和己

三重県立美術館は、1982(昭和57)年に開館し、2002(平成14)年で20年を迎えることとなった。作品の収集は美術館のもっとも基本的で重要な活動のひとつであり、これまで積極的に行ってきた。収集活動は美術館開館に先立つ、1980(昭和55)年から開始された。収集にあたっては、(1)江戸時代以降の作品で三重県出身ないし三重にゆかりの深い作家の作品、(2)明治時代以降の近代洋画の流れをたどれる作品、また日本の近代美術に深い影響を与えた外国の作品、(3)作家の創作活動の背景を知ることのできる素描、下絵、水彩画等、という基本方針がたてられ、それを中心にして行われている。また、三重県がスペインのバレンシア州と姉妹提携が結ばれることになったことなどにより、1992(平成4年)からは新たに(4)スペイン美術もこれに加えられた。

収蔵作品は開館時には、約360点だったのだが、毎年、購入や寄贈によって少しずつ充実し、現在では約5,000点を数えるに至っている。収集の方法は、県費による購入のほか、美術家、美術愛好家やその遺族、地域関係の企業からの寄贈なども多い。なかでも、岡田文化財団からは開館当初にシャガールの《枝》[68]を寄贈していただいたのを始め、きわめて好意的な寄贈が続けられ、三重県立美術館の特色あるコレクションの一つとなっている。また、10周年には県費によりスペインの画家・ムリーリョの《アレクサンドリアの聖カタリナ》[57]、三重県企業庁からピカソの《ロマの女》[76]が、15周年にはダリの《パッラーディオのタリア柱廊》[83]が購入され、それぞれ美術館の代表作品となっている。いずれにしても、こうした作品収集は、普段の調査・研究が基礎となっており、継続して収集されて美術館の骨格を形成するものである。

当美術館コレクションとしての特色の第一に挙げられるものは、明治時代以降の近代洋画であろう。学校の教員として三重県に来た藤島武二[32]鹿子木孟郎[6]、赤松麟作、三重県出身の岩橋教章[1]らなど、三重県にゆかりの人たちを含めて、近代の日本洋画の流れをたどることのできるコレクションは、全国的にも高い評価を得ており、これまで各地の美術館で三重県立美術館コレクション展として幾度か開催されている。日本画では、江戸時代の特異な画家として知られている曾我蕭白の作品が、重要文化財に指定されている旧永島家襖絵[89]をはじめ、まとまって収蔵されているし、近代では宇田荻邨の作品も本画のほか下絵など、質の高いコレクションである。

今回、当館開館20周年を記念して二つの大きな寄贈があった。ひとつはこれまでも、ヨーロッパ絵画や三重県ゆかりの作家の作品などを寄贈していただいていた、岡田文化財団から、モネの風景画《橋から見たアルジャントゥイユの泊地》[63]のご寄贈である。印象派の意義深い作品が加わり、ヨーロッパ絵画がさらに充実した内容となった。

もうひとつは、現代具象彫刻の代表作家、柳原義達の作品が一括して大量に寄贈されたことである。作者から、彫刻作品70余点、デッサン数百点のご寄贈である。柳原義達のほぼ全生涯の活動を見ることのできる作品であり、この後もデッサンなど、引き続き寄贈される予定で、さらに充実されていくだろう。

三重県立美術館の収蔵作品は、以上のように多くの方々によって、少しずつ充実してきているが、まだ質、量ともに不足しているところが多い。これからも長い時間をかけてより一層充実させて、県民の方々の要望に答えられるコレクションを作って行く必要があろう。

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