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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1990 > ごあいさつ 横山操・横山大観の瀟湘八景と近代の日本画図録

ごあいさつ

 中国湖南省の瀟水と湘水が合流して洞庭潮にそそぐ周辺の、湿潤豊かな八つの景を主題とした「瀟湘八景」は、宋時代の宋辿が初めて描いたといわれ、日本でも室町時代以降数多く描かれています。八つの実景を定めたものではなく八つの主題に基づいて、画家それぞれが想像力を駆使して詩趣溢れる「瀟湘八景」を制作しています。近代では、横山操と横山大観が古典にならいながらも従来の「瀟湘八景」とは異なる解釈による大胆な構図の「瀟湘八景」を制作しています。横山操と横山大観の「瀟湘八景」が、日本画家に与えた影響は決して小さくありません。

 この展覧会では、横山操と横山大観の「瀟湘八景」を中心に、水墨や水墨淡彩によって独特の幻想世界を構築した小川芋残、都路華香に師事した後院展を舞台に南画風の自由闊達な表現を見せた富田渓仙、西洋画の技法を取り入れた没骨描法を試みた菱田春草、写実を基礎とした清楚な作風に大和絵研究の成果を見せる前田青邨、そして平福百穂、小林古径、安田靫彦らを加え、西洋の絵画に対する日本画の独自性を強く意識した主題を求め、表現方法にも腐心を重ねた明治以降の作品群によって、近代における日本画の一側面を紹介するものです。

 当館では所蔵品のなかから核となる作品によってテーマを設定し、このテーマに基づく当館所蔵作品を軸とした展覧会を今後開催していくよう計画しています。本展はその第1回目の企画で、横山操「瀟湘八景」など当館所蔵の作品36点に、横山大観「瀟湘八景」をはじめとする茨城県近代美術館所蔵作品28点を展示して、東洋の伝統的な主題を含む様々なモティーフを、墨などによる濃淡、意表をつくような構図など、多様な表現を見せる近代日本画の風景描写の世界を紹介するものです。

 最後に、この展覧会の開催にあたり、貴重な作品をご出品いただきました茨城県近代美術館をはじめ、ご協力をいただきました関係各位に厚くお礼申し上げます。

1990年4月

三重県立美術館
三重テレビ放送

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