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美術館 > 刊行物 > 所蔵品目録 > 3 鴉 柳原義達作品集

3 鴉

鴉が柳原作品にはじめて登場したのは1966(昭和41)年、神戸市に設置された《愛「仔馬の像)》、第7回現代日本美術展出品作《風と鴉》であった。この作品を制作するための取材で動物園の他、北海道へも足をのばした柳原は鴉に強い愛着を抱くようになり、自宅でも飼育するようになったという。

鴉について柳原は次のように記している。

私はカラスの庶民的な性格と、形態の美しさにひかれ、すっかりとりこになっている。 カラスは彫刻の制作意欲を激しく駆り立てる存在なのである。・・・鋭い口ばし、黒く つややかに輝く羽、バランスのとれた体、素早い動作、描けば描くほど、私はカラスに 魅せられた。

「道標・鴉」という題名が付されて、柳原独自の世界である「道標」シリーズの端緒となったのも鴉の像である。後に制作された作品には、「風の中の鴉」「風と鴉」「風の中の鴉」など独立した題名が与えられる場合もあった。こうした作品名に、倦むことなく一人彫刻を制作し続ける柳原自身の姿を重ね合わせることはうがちすぎであろうか。

同じ「道標」といっても、鳩と鴉では若干の相異がある。実際の鴉の大きさより大きく制作された像があること、飛翔の直前直後と思われる動的な態勢を取る姿に表された像があること、こうした点は鴉の作品に顕著な特徴ということができるだろう。

鳩と比較して鴉の像は点数は少ないけれども、その姿には日本では必ずしも好意的には迎えられないこの鳥に対する柳原の心優しい思いが込められているだけでなく、柳原独自の鋭い眼と手の力によって生み出された、自然の生物が持つたくましい生命力、彫刻本来が備えるべき力強い塊量感を見て取ることができる。

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