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美術館 > 刊行物 > 所蔵品目録 > 6 素描 柳原義達作品集

6 素描

柳原は81993(平成5)年に年齢を感じさせない清新な彫刻《靴下をはく女》を発表した後、体力の衰えと白内障による視力低下のために彫刻制作からは遠ざかることとなる。しかし、素描制作はその後も続けられた。生ある限り、倦むことなく素描を描くことはこの彫刻家にとっては当然の行為であった。

現存する1950年代から2001(平成13)年までに描かれた素描は膨大な量にのぼる。初期にはコンテやインク等で描かれた素描もあるが、ある時期からは専ら黒いフェルトペン(サインペン)が使用されるようになった。また、近年はクレヨンやパステルで着彩された素描も見受けられる。

そうした素描には、「彫刻は触覚空間の芸術」と強調する柳原の空間認識のありようを目の当たりにすることができる。繰り返し素描を描き、頭の中に完全にテーマが入ってから彫刻制作に取りかかると柳原は述べているが、それは人物や鳩、鴉等の動き、ボリューム、プラン(面)などを完全に把握するという意味であろう

素描を描くことは、柳原が言う自然法則ー量の移動、量と量のひしめき、プランの構成、均衡の美しさ等々ーを把握するための目と手の訓練でもある。素描の画面構成、対象の細部描写といった絵画的要素はほとんど問題とならない。彫刻の制作がかなわなくとも、素描することによって柳原は紙の上で彫刻を制作し続けているのである。

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