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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1987 > あいさつ 江戸絵画の鬼才 曾我蕭白展図録

あいさつ

 三重県立美術館は昭和57年に開館いたしましたが,今秋開館五周年を迎えることになり,これを記念する展覧会として「江戸絵画の奇才─曾我蕭白展」を開催いたします。

 曾我蕭白は,18世紀の半ばから後半にかけて池大雅・円山応挙・伊藤若沖らと時を同じくして京都を中心に活躍しました。蕭白は,主として水墨の山水画・花鳥画や人物画の分野に練達した画技を振いましたが,その作風は,曾我派・雲谷派など江戸時代以前の古い時代の画風を慕いながら決して保守的ではなく,古典的伝統的な主題をきわめて特異な芸術的個性で換骨脱胎した,大胆で近代を予兆するような斬新さに溢れています。また,強烈な個性に裏打ちされた,数々の作品を遺した蕭白の奇矯な行動にまつわる逸話は,18世紀京都の高揚した文化状況を如実に伝えるものとも解釈されるようになり,蕭白の存在は近年ますます注目を集めています。

 曾我蕭白の生涯には,不明な点が少なくありませんが,主に京都で活躍する一方,何度か伊勢地方を訪れたと伝えられます。戦災等によって失われた作品も少なくありませんが,現在もなお,県下には蕭白の代表的な作品が数多く残っており,こめ地方は蕭白研究にとって重要な意味を持っています。

 今日,曾我蕭白は江戸時代後期を代表する画家のひとりにかぞえられています。しかし,我が国で蕭白が注目されるようになったのは20年程前からのことで・り,それ以前はほとんど顧みられずに,むしろ外国の人々によって高く評価されてきました。特に,明治時代前期に来日したフェノロサやビゲローらによって多くの作品が米国に持ち出されて,ボストン美術館に五十数点に上る質量共に優れた蕭白コレクションが所蔵されていることはよく知られています。

 今回の展観には,それら在米の蕭白作品は出品することはできませんでしたが,国内に所蔵される主要な作品をほぼ網羅した初めての大規模転回顧展であり,我が国で曾我蕭白の研究を最も早く始められた辻惟雄東京大学教授の協力を得て,充実した内容となるよう準備を進めて参りました。

 最後に,この展覧会の開催にあたり,貴重な作品をご出品いただいた各博物館美術館,および所蔵家の皆様をはじめ,ご協力をいただいた関係各位に厚くお礼申し上げます。

昭和62年10月

三重県立美術館
(財)岡田文化財団

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