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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1984 > ごあいさつ 海・その幸と形象展図録 1984

ごあいさつ

 周囲をとりまく自然が四季のうつろいとともに映しだす濃やかな表情は古来,私たち日本人の生活感情に深い共感をあたえつづけています。とりわけ,海に対する日本人の共感は,文学や美術における永遠のテーマと申せましょう。

 海辺をめぐる様々な景物は,中世には,山里とともに当代の美意識を代表するものとして,宗教的契機あるいは文学的観想と不可分の関係を守りながら,描き継がれました。近世にはいると,時代の新しい担い手である庶民は,中世以来の古典的な伝統を洗いなおして平俗化し生活のなかで育んだ創造性豊かな美意識を,海をはじめ周囲の描写に傾けます。また,博物学的関心から生まれた図譜類の写実的な魚介の表現や新しく西洋から移入された風景表現には近代につながる造型表現の萌芽をみることができます。そして近代においては,宗教や文学の型砕から離れ,個性的な造型表現をうみだす契機として,海は重要なモティーフのひとつとなってまいります。

 このたびの展覧会は,このような観点から,鎌倉時代から現代にいたる海を主題とした作品およそ50点をもって日本美術の流れを展望しようとするものです。

 本展を開催するにあたって,貴重な作品を快くご出品いただきました全国各地の美術館,博物館,図書館,個人所蔵家の皆様,ならびに暖かいご支援を賜りました関係各位に,厚くお礼申しあげます。


1984年10月

三重県
三重県立美術舘

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