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ブロンズ彫刻の鋳造

 塑像を制作する場合、作家たちはまず彫刻用粘土を素材にする。しかし、柔らかい粘土のままでは毀損する恐れが大きく、作品の永続性を確保することは困難である。そのため、粘土で制作された作品を石膏や合成樹脂で型取りして原型を作り、その原型からブロンズなどの金属に鋳造されるのが一般的である。

 原型が存在するところから、物理的には複数のブ口ンズ作品を鋳造することが可能となる.野外に設置される大型像や、注文制作の肖像彫刻などが複数鋳造される例は少ないが、歴史的、芸術的に価値があると考えられる作品、需要が多い人気作品などは複数鋳造されるのが通例である。また、木彫は本来一点限りのものだが、時には木彫を原型としてブロンズ作品が鋳造されることも行われる.

 ロダンの《考える人》をはじめ、国内外で同じ作品が複数存在しているのは、鋳造が幾度か行われた結果である。この点は、銅板や版木から複数制作される版画と似たところがあるといえるだろう。版画作品で、刷り師、刷り部数(工ディション)、刷られた時期、作者監修の有無が問題にされるのと同様に、ブロンズ彫刻でも、鋳造所と鋳造技法、鋳造数、鋳造時期、作者監修の有無などの問題は不可避である。

 また、彫刻固有の問題として、原型を拡大、縮小して鋳造した像、原型を型取りした二次原型、ブロンズ作品を新たに型取りして鋳造した像の存在などがあり、ブ口ンズ彫刻の鋳造をめぐる問題は非常に複雑である。

 作家が生前に鋳造の仕上がり状態を確認したブロンズ作品と、作者の没後に後世の人が鋳造したブロンズ作品を同じと見なしてよいのか。最初に鋳造された作品と何番目かに鋳造された作品を同じと見なしてよいのか。こうした問題は、作者や著作権継承者の権利だけではなく、経済的な側面も関係する難しい面をもっている。

 近年、こうした鋳造彫刻に関する諸問題は日本でも注目を集めるようになったが、彫刻家だけではなく、美術商、収集家、美術館など関係者が各方面に及ぶこともあって、必ずしも共通理解が得られていないのが実状である.

さらに、技術的な問題もある。
 わが国では、彫刻の鋳造には真土型(まねがた)(焼型)鋳造という収縮や歪みが少なく、仕上がりの美しい工法が用いられることが多い。しかし、複雑な工程を要するこの鋳造法の技術をもった鋳造所が、都市化と効率化、後継者難のために少なくなっていることが、長期的な課題として指摘されている。

 こうした彫刻の鋳造に関わる問題は、作家の権利を保護し、将来にわたって彫刻芸術をより多くの人々が享受するうえで非常に重要である。今後も関係者による協議が継続され、この問題が社会的に広く認知されることが必要であろう。

(毛利伊知郎)

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