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7 曾我蕭白・旧永島家襖絵

曾我蕭白(1730−1781)は、少なくとも2度、伊勢の地を遊歴している。現在も三重県内には、《唐獅子図》(朝田寺)や《雪山童子図》(継松寺)をはじめとして、蕭白の代表作ともいえる作品が少なからず遺されており、蕭白がこの地で意欲的に制作活動をおこなったことが明らかである。三重県立美術館では、三重県とかかわりのある重要な画家のひとりとして、開館当初から蕭白の調査・研究を継続し、その成果として、1987年(昭和62)に『曾我蕭白展』、1992年(平成4)に『その後の蕭白と周辺』、そして本年度には『江戸の鬼才 曾我蕭白展』と3度の蕭白展を開催している。

今回、所蔵品展『コレクション万華鏡−8つの部屋の7つの話』の8番目の部屋(県民ギャラリー)をかざる旧永島家襖絵は、三重県多気郡明和町の旧家永島家に描かれ、伝えられた襖絵44面である。《波濤群禽図》《竹林七賢図》《瀟湘八景図》《松鷹図》《禽獣図》《狼狢図》《牧牛図》からなるこの旧永島家襖絵(cat.nos.7−1〜7)は、今年6月に一括して重要文化財に指定された。蕭白作品では、1908年(明治41)に《寒山拾得図》(京都:興聖寺)が国宝(現重要文化財)に指定されたのをはじめとして、1991年(平成3)に《唐獅子図》、1992年に《楼閣山水図》(滋賀:近江神宮)が重要文化財に指定されている。もちろんこれらの作品以外にも優れた出来映えを示す蕭白作品が現存している。

それでは、旧永島家襖絵と他の作品との違い、つまり旧永島家襖絵の特徴はどのような点にあるのだろう。 まず第一に、その規模の大きさをあげることができる。襖44面という数は、一カ所に遺された蕭白作品として最大規模であり、その画題も花鳥、山水、人物と多岐にわたっている。なおかつこれら44面の襖絵は、蕭白の幅広い画域を示しているという点で興味深い。特に墨使いの多様さは、硬質で繊細な筆致で描かれた鷹や、勢いよくダイナミックに描きながら部分的にたらし込みをもちいて描いた松というように、モティーフにより描き分けをみせる《松鷹図》(cat.no.7−4)から、「蛇足軒蕭白酔指画」の落款をもつ《牧牛図》(cat.no.7-7)のように、酔った勢いで指で描いたという指頭画にまで及ぶ。

従来、蕭白は、あくの強い独特の画風から、「異端」「奇想」というイメージが先行しがちであった。しかし、近年では、そのような偏ったイメージが先行したことを反省し、さまざまな視点からの研究が進められている。旧永島家襖絵は、「異端」「奇想」という従来のイメージ通りの一側面と、確かな画面構成力あるいは巧みな筆使い、墨使いという蕭白の技術の高さという側面をともにあわせもっている。つまり《竹林七賢図》(cat.no.7−2)の高士たち、あるいは《禽獣図》(cat.no.7−5)の狸や《狼狢図》(cat.no.7-6)の狼の表情には、従来通りの蕭白らしさが、一方で《竹林七賢図》の画面構成や《松鷹図》に代表されるような墨技の巧みさなどには、蕭白の計算しつくしたうまさをみることができるのである。したがって旧永島家襖絵は、蕭白の新しい側面を考えてゆく上においても重要な作品であることはまちがいない。

(佐藤美貴)

7−1《波濤群禽図》12面




7−2《竹林七賢図》 8面


7−3《瀟湘八景図》 8幅(掛幅)


7−4《松鷹図》 5面


7−5《禽獣図》 4面


7−6《狼狢図》 3幅(掛幅)


7−7《牧牛図》 4幅(掛幅)

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