ごあいさつ
三重県立美術館では、県民ギャラリーにおいて「間部時雄展」を開催することになりました。過去に開催しました「鹿子木孟郎 水彩・素描展」や「榊原一廣とその周辺展」などの展覧会が、美術史の再検討、再評価の一つの機会となっていましたが、これらの展覧会は三重ゆかりの作家たちでした。今回の「間部時雄展」はこうした方向をさらに広げて、最近新たに発見された間部時雄の作品群を紹介することになりました。本展は、美術館における全国でも初めての間部の大規模な回顧展でもあります。
明治18年、熊本県に生まれた間部時雄は、明治35年、新設された京都高等工芸学校(現在の京都工芸繊維大学)に入学し浅井忠に師事、明治40年頃から大正初年頃には卓抜な表現技術をうかがわせる軽快な色調の水彩画を描いています。その後、大正9年から14年までヨーロッパ各地を巡り、特にゴッホ終焉の地となったオーベル シュル オアーズにおいてドクトル・ガッシェの息子、ポール・ガッシェと知り合い、交遊関係を深めていくうちに、ガッシェを通じてゴッホとセザンヌから強く影響を受けています。
本展は、京都高等工芸学校時代の鉛筆によるスケッチから、晩年の作品まで、油彩画24点、水彩・素描67点、版画29点、図案18点、それに画巻、スケッチブックを加え、合計151点によって、多彩な間部の芸術を紹介するものです。
最後に展覧会開催にあたり、快くご出品くださいました高野光正氏、ご遺族ならびに関係各位に厚くお礼申し上げます。
1991年7月
三重県立美術館
陰里 鉄郎