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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1999 > ごあいさつ 小林研三展図録

ごあいさつ

小林研三は1924年(大正13)三重県四日市に生まれ、幼少にして桑名にうつり、以後現在にいたるまで桑名に住みつづけている洋画家です。ゴッホの伝記をよんで芸術家にあこがれひとりで育てていた夢は、名古屋在住だった横井礼以の知遇をえることで現実にむかっての一歩をふみだすことになりました。1942年に二科展に『帰る頃』が初入選しますが、すでに太平洋戦争は最後の段階にはいって美術団体は解散し、小林も徴兵され、数年のブランクを余儀なくされました。

そういうわけで画家としての真の出発は、敗戦後の1947年(昭和22)、第1回二紀展に『風景』が入選したときにはじまります。以後ほとんど毎回二紀展に出品していますが、桑名のちいさな丘の上に家を新築して多数の動物たちと生活をともにすることで、絵はしだいに変化してゆき、身辺日常をたしかな眼でえがくようになります。

1950年代、60年代の小林の絵はほとんど鳥だけしか登場しなくなりましたが、長いあいだ生活をともにしてきたサイクスモンキーと狸があいついで亡くなったころから画風は一変して、それまでのような鳥が画面から姿をけすかわりに、いっそう自身の日常の暮らしに根ざした題材がとりあげられるようになります。まるで絵のなかで暮らしているような絵がえがかれるといっていいでしょう。それは小林の暮らしでありながら、垣根はとりはらわれ、だれでも気軽に親しくはいってゆくことができる絵だともいえます。

絵をかくことが生活であり、生活することがそのまま絵になること。小林は理想についてかたることがほとんどありませんが、もしあるとしたら、芸術にとってはしばしば矛盾をうむそのあたりにあるのではないでしょうか。今回の展覧会ではこんな小林研三の小さくても独立したせかいを油彩画と鋼版画を中心にして再構成します。楽しんでください。

1999年5月

主催者

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