あいさつ
このたび,日本近代洋画の代表的存在,藤島武二の没後40周年を記念する回顧展を開催する運びとなりました。
1867年(慶応3)鹿児島に生まれた藤島武二は,はじめ日本画を修業しますが,やがて洋画に転じ,鋭い感受性を活かした初期の作品によって,のちに明治浪漫主義と呼ばれるに至る時代の風潮を的確に視覚化することで脚光を浴びました。しかし青木繁や竹久夢二に影響を与えたその画風も,4年間のフランス,イタリア留学を契機に大きく変貌し,イタリア文芸復興期の巨匠たちの芸術を改めて学びなおすことによって,大正・昭和のわが国洋画家の中でもっとも正統的な画家と称されます。晩年に入って彼の画業はますます充実し,とくに各地の「日の出」を描いた風景画に本領を発揮して,気宇の大きい,清新な画風を確立してゆきました。
また藤島は,26歳のときから約3年間ほど三重県尋常中学校で教え,その後東京美術学校(現・東京芸術大学)に招かれて,すぐれた洋画家を数多く育てあげました。近代日本美術史に巨人の一人として存在するばかりでなく,美術教育を通しても,日本の美術に大きな力をおよぼしています。
この展覧会の開催にあたり,貴重な作品をご出品いただいた各美術館および所蔵家の皆様をはじめ,ご協力いただいた関係各位に厚くお礼申し上げます。
昭和58年4月
三重県立美術館
中日新聞
神奈川県立近代美術館
東京新聞