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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 2001 > ポンポン、フランソワ 生田ゆき アートになった動物たち展図録 2001

フランソワ・ポンポン
Françcois Pompon

1855年、ソーリゥー1933年、パリ

57 《白熊
White Bear

1922年頃
c.1922

大理石
Marble

25.4×44.5×14cm
(台座 4.4×44.5×15.2cm)

個人像(ニューヨーク)
Private Collection,New York


「欠落も影もない」彫刻。ある人はポンポンの作品をそう呼びました。まるまるとしたボリューム。つるつるの表面。どことなくユーモラスな表情。彼の動物たちは見る人を思わず微笑ませてくれます。今では動物彫刻家として有名なポンポンですが、スタートも名声も決して早くはありませんでした。

1855年ソーリゥに、高級家具職人兼仕立屋の息子として生まれます。少年時代は墓碑彫刻を手がけていた大理石職人の工房で、働き学費を稼ぐ生活でした。ディジョンの美術学校で建築を学んだ後、パリの装飾美術学校やエコール・デ・ボザールの夜間講義に出席しながら、建築や墓地の装飾の仕事を続けます。1890年以降ロダンの助手として長い間勤めたことが、良くも悪くもポンポンの人生を左右してしまいます。1917年の師匠の死の後、自分独自の表現を模索していた彼は、1921年、決定的な作品を発表します。それが《シロクマ》です。この時ポンポン67歳でした。

《シロクマ》ではフワフワとした毛並みや、複雑な筋肉の起伏は抑えられ、リアルさと省略のぎりぎりのバランスが際だっています。ことさらに大げさな演出はなく、熊本来の自然な動きが捉えられています。光は艶やかな大理石の表面をなで、優しい輪郭線を浮かび上がらせます。その線には終わりがありません。全体が一つの輪をなして、影さえも包み込んでいます。まるで、遠くから眺められたかのように、その動物が持っている最も特徴的な要素だけが凝縮されています。この効果を追求するためにポンポンは写真を積極的に利用して、何度も何度も形を練り、小さな部分に至るまで、ヤスリをかけて仕上げの効果にこだわりました。

「私が表現しようとしていることは、運動の感覚です。動物園で動物たちが歩き回るとき、わたしも動物になります。興味をそそるもの、それは動き回っている動物です」。ポンポンにと手、動物彫刻は、動かない物ではなく、命を持った存在でした。制作とはすなわち彼にとっては、愛すべき動物たちとじゃれあいに近いものだったのかもしれません。

1930年改修されたアトリエの玄関のドアには、ゆったりと穏やかな面もちの熊の頭部がかけられ、主の帰りをいつまでも待ち続けています。

(生田ゆき)


参考文献

Retrospective,François Pompom 1855-1933,Braime & Lorenceau,1999.
Pompom et la sculpture moderne: Dessir de l'Art 19,Juin-Juillet 94/45 France

ページID:000056350