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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 2001 > ロスト、クロード 生田ゆき アートになった動物たち展図録 2001

クロード・ロスト
Claude LHOSTE

1929年、パリ―

36 《カタツムリ
Escargots

1959年制作

樹脂
Resine

53x24x18cm

作家蔵
Collection de l'artist

37 《渡り
Migration

1962年制作

ブロンズ
Bronze

23×35×16cm

作家蔵
Collection de l'artist

38 《オオコウモリ
Les Rousettes

1964年制作

ブロンズ
Bronze

23×30×20cm


作家蔵
Collection de l'artist


1929年6月29日、クロード・ロストはパリに生まれました。ヴァンセンヌ動物園のそばで育ち、お気に入りの動物に会えないと機嫌が悪くなる子供時代でした。でもある日突然ひらめいたのです。本物の動物達と一緒にいられないなら、粘土をこねて彼らを作ればいいのだと。初めての作品は15歳の時オウムでした。パリの応用美術学校でピエール・ドラヴェルス(1892-1979)のもとで彫刻を学び、大人になってもいつも自分が生み出した動物達に囲まれることとなり、アトリエはまるで小さな動物園のようでした。

彼が彫刻を作るときに気を付けたことは二つ・ります。まず一つ目は仲間達の生態をじっくり観察すること。それと矛盾するようですが、ふたつ目は、第一印象を大切にすること。それらによって動物達の一種神秘的ともいえる生命感を表現しようとしたのです。そのおかげでロストの手から送り出される彫刻は動きと美しさとユーモアが絶妙の調和を見せています。

クロードは動物達がそれぞれ持っている形を大切にしましたが、あくまでそれらはあくまでも彼ら特有の躍動感を表すための引き立て役にしか過ぎません。全体を包むボリューム感やうねるような輪郭線は優美でリズミカルは調子へとつながります。そこから緊張感が芽生え、彼らの温かい息吹があふれてきます。彼はデッサンもたくさん描きました。新しい技法に果敢に挑戦し、独自のものにしようと意欲的でした。

ここに挙げたロストの3つの彫刻に共通する印象は、ぽってりとした安定感のあるボリュームと、なめらかな表面の仕上げです。また、その動物一体だけで単独の構成をとるのではなく、仲間と一緒の場面を意識的に選んでいます。それにより、形としての美しさやおもしろさを越えて、彼らの日常があぶりだされています。すなわち生命を持った存在としての側面が際だってきているのが特徴的です。

《カタツムリ》は一方がもう一方に寄り添うように頭を傾げて、何か秘密の話を交わしているような親密さが漂っています。二匹は微妙に曲線のカーブが異なるので、まるで恋人同士の会話のように見えます。《渡り》は大勢の鳥たちが一段となって、そらを横切るさまが、単純化されながらもダイナミックに伝わってきます。全体としてのスピード感や躍動感が魅力です。《オオコウモリ》では形はより抽象的になり、一見するとどこがコウモリなのかはっきりしないかもしれません。しかしもう一度じっくり観察してみましょう。コウモリが持っている不気味な雰囲気と、仲間との語らいが絶妙なバランスで溶け合っています。

(生田ゆき)


文献

Les sculpteyrs et l'animal dans l'art du XXe siècle(Monnaie de Paris,1999)p.66.
Lhoste(Bestiaire,1999),p.52.

ページID:000056347