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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 2001 > ブールデル、アントワーヌ 生田ゆき アートになった動物たち展図録 2001

アントワーヌ・ブールデル
Antoine Bourdelle

1861年、モントーバンー1929年、ヴェジネ

12《ひび割れた馬の頭部ーアルヴェアール将軍記念碑のための習作
Tête de cheval craquelée-Etude intermédiaire pour le monument du Général Alvear

1913-14年

ブロンズ
Bronze

45×17×47cm

ローディア・デュフェ=ブールデル・コレクション、パリ
Collection Rhodia Dufet Bourdelle,Paris.

13《ボリヴァールの馬ーアルヴェアール将軍記念碑のための習作》
Cheval Bolivar-Etude pour le Monument du Général Alvear

1914年頃
c.1914

ブロンズ
Bronze

46×44×20cm

ローディア・デュフェ=ブールデル・コレクション、パリ
Collection Rhodia Dufet Bourdelle,Paris.


1861年の秋、南フランスのモントーバンに家具木工職人の息子として生まれたブールデルは、絵を描くことが好きな少年でした。1870年の中頃、家計が困窮し、学校を辞め、父の仕事を手伝い市立工芸学校の夜学に通う生活となります。しかしブールデルの早熟な天才ぶりに周囲の推薦もあって、1876年トゥールーズの美術学校に入学、24歳まで在学し本格的に彫刻を学びます。1884年パリに上京、美術学校に2位で入学します。その後2年間で独立。アトリエを借り、そこが現在のブールデル美術館です。ロダンの助手として彼から多大な影響を受けたのは1893年から1908年の15年間でした。

今回出品されている2体の馬の像は、友人のアルゼンチン画家ロドルフォ・アルコルタの推薦により、アルゼンチン共和国の英雄カルロス・マリア・アルヴェアール将軍(1788~1852)の記念碑のための習作です。この記念碑は非常に大がかりなもので、中心像の高さは23メートルの高さに及び、四方を花崗岩の台座に据えられた騎馬群像によて囲まれ、「力」「勝利」「自由」「雄弁」を擬人化した4つの彫像を含みます。その準備のために作られた習作は157体、おびただしい数のスケッチが残されています。

ブールデルが騎馬像のモデルを探しに行ったのは、故郷のモントーバンでした。そこには彼の少年時代につながる大切な思い出がありました。後に彼はこう言っています。「代々孤独な山羊番人であった父方の血を受け継いで、わたしも子供の時代には粗っぽい仕事に興味をもった。百姓や動物、岩や樹の香り、厩の健康な臭気、わたしはわたしの国の田園を賛美していた」。

人物像に負けないくらい、ブールデルは動物の彫刻に熱心に取り組みました。時には愛情をもって、一頭一頭念入りに観察しつつも、仕上げの段になると細部にはさほどこだわらずに荒々しさを残すこともありました。

本来ならば、馬は全身像で表され、その上には輝かしい将軍がまたがるはずです。しかしここでは、そのような晴れがましさは消え、馬本来が持っている高貴さや美しさ、力強さが全面に押し出されています。それは彫刻家が対象にたいして向けたまなざしが生み出すものに違いありません。

記念碑全体は1912年に注文を受けてから13年後の1925年にブエノスアイレスで除幕式が行われました。その3年前、サロン・ド・チュイルリーにはじめて発表した際、多くの芸術家たちがこの作品が南米に運ばれてしまうのを惜しんだと言われています。

(生田ゆき)


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