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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 2001 > ブシャール、ジャンヌ 生田ゆき アートになった動物たち展図録 2001

ジャンヌ・ブシャール
Jeanne BOUCHART

1967年パリ―

10《遊び
Jeu

1993年

ブロンズ
Bronze

105×39cm

作家蔵
Collection de l'artist

11《ネコ科の動物
Félin

1995年

ブロンズ
Bronze

50×29×47cm

作家蔵
Collection de l'artist


糸のように細く、デリケートで緊張感に満ちている。ジャンヌ・ブシャールが迷い無く刻むのは、まじりけのない感情です。彼女が生み出す生物は空間の中で進化を遂げていきます。それはあたかも、「跳躍」という動きには本質的に優美さや軽やかさが凝縮されているため、体全体がより気高く偉大なものへと上っていくかのようです。落ちていくのでもない、昇っていくでもない、その間にある危ういバランスが生み出す究極の瞬間が、彫刻家の探求のすべてを表しているのです。

ジャンヌの作品が持つ優美さは、時に残酷であると感じられたり、見る者を不安にさせます。優美さはもちろん優しさにつながりますが、彼女が生み出すものが持つ軽快さは同時にすべての表現に緊張感を与えるように思えるのです。

ジャンヌの動物達はいつも謎めいており、私たちの眼を生命の神秘へと向けさせます。彼女が人間を作るときは鳥のような人間のようなものとなり、動物を作るときは、必ずしも実在するものとは限らずに、ただ「生物」というカテゴリーに属するとしか表現できないことがあります。

ジャンヌが初めて彫刻に取り組んでから、常に彼女はテーマとして動物を特別なものと考えてきました。すなわち、直接人間を表現するのではなく、距離をおくことによって、逆に人間の魂に触れる近道になるのだと考えていたのです。

作家のこの試みはまさにその作品に現れています。彼女の動物達が帯びる非常に繊細な肉付き、緊張感に満ちたライン、もともとの骨格や筋肉の構造を覆い隠してしまうような重々しいものは取り除かれた引き締まった肌。作品を見る者は、奥底からわき出る生命を感じることができます。とぎすまされた形は熱を帯びて、しっかりと手で触れることができるような生命の鼓動を伝えてくれます。

(生田ゆき)


文献

Les sculpteyrs et l'animal dans l'art du XXe siècle(Monnaie de Paris,1999)p.24.

ページID:000056338