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ダンスの華麗さ
Apparat d'une Danse

1960年
ブロンズ
118×76×10.5cm

この時期に制作されたレリーフ彫刻は,大雑把に分けて次の2種類,つまり鋭く尖った輪郭を強調するものと,この「ダンスの華麗さ」のように,円い曲線を際立たせるものとがある。前者の例としては,「小劇場」〔No.29,1959年〕や「植物の銃眼のある敷居」〔No.32,1959年〕など,後者の例としては,「曲りくねった単純さ」〔Trier227.1960年〕や「波打つ敷居」〔No.37,1960年〕などを列挙することができる。この「ダンスの華麗さ」は,穿たれた孔のある丸彫り彫刻,たとえば「鳥の骨格」〔No.13,1947年〕などを,シルエットの効果を主たる狙いとする二次元的な彫刻に還元した作品といってよい。その観点からすれば,この彫刻は,「小劇場」などの神経質で尖った形態モチーフを駆使したレリーフ的作品と,なめらかな曲面によって造形された丸彫り彫刻との中間に位置しているといってよい。というのも「ダンスの華麗さ」は,二次元的ではあるが,アルプの制作した数多くの丸彫り彫刻を連想させるからである。その意味では,中央に穿たれた円形の孔も,非常に重要なモチーフといえよう。作品全体から受ける印象を述べれば,非常に大胆な運動感が顕著である。とくに図版の角度から見て,向って左側の中ほどより下の左方へ突き出した個所では,きわめて不安定な状態でこ 下部の形態が上部の形態,すなわち人物を想像させる部分を支えているように見える。〈ダンスの華麗さ〉とは言い得て妙な作品名であるが,アルプは多分この彫刻が完成した後に,作品の視覚的印象に相応しい題名を付けたのであろう。それ故,この作品名は,完成された彫刻と,いわば付かず離れずの微妙な関係にあるといってよい。確かに上半部の人体を想起させる形態は,ダンスをする人物が華麗に跳躍している印象を与える。しかし作品を見ながら意味内容を読みとろうとすればするはど,逆にそうした具象的イメージは不明瞭になり,ただレリーフ状の円い曲線のモチーフという,自然の物体とは無関係の金属の塊が眼に映るのみである。要するにこの作品は,ダンスを踊っている人間のイメージを喚起させるような非対象的フォルムを示す彫刻なのである。


(中谷伸生・三重県立美術館学芸課長)

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