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ごあいさつ

かつて、私たち人間は、人間とは異なる姿、能力をもつ動物たちにある種の畏敬の念をいだき、狩猟や牧畜を行いながらも、動物たちと共存する生活をおくってきました。しかし、近代以降、様々な科学技術の発明と人間優先の価値観とによって、人間は動物たちを支配できる方のような幻想をいだき、私たちの祖先が動物に寄せていた畏敬の念を忘れて、人間社会のために数多くの動物を利用するようになります。近年のペットブームも、果たして動物たちにとって幸せかどうか疑問が残ります。また、今日、世界各地て自然破壊による深刻な環境問題が多発しています。既に指摘されているように、その原因の多くは動物を含めた自然に対する人間の驕りの結果であり、現代の私たちには、社会のあり方、あるいは自然や動物と人間との関係などについて考え直すことが求められています。

ところで、古今東西の別なく動物は造形芸術の重要なテーマの一つです。造形作品には、私たちに身近な愛玩動物や家畜などを初め、異国にすむ珍しい動物、実在しない空想の動物など様々な動物が登場します。多くの優れた作品に見られるように、かつては動物は超自然的で神聖な存在と見なされ、象徴的、宗教的な意味をもって表現されることが多かったようです。

日本では、近代的な合理精神が伝わり治めた18世紀後半以降、動物たらに対する強い好奇心と鋭い観察眼とによる写実描写を一部の画家たちが始め、それまでの宗教的、象徴的な意味から離れて動物たちが表れされるようになります。

明治時代以降、急激に押し寄せた西洋の芸術思想の強い影響のもと、伝統的な花鳥画や写生表現にとどまることなく、商家や彫刻家たちは旺盛な観察眼と想像力を働かせ、動物を中心とする小宇宙、人間社会の諷刺・比喩としての動物、人間と動物との交流など、動物に関係した多彩な造形世界を提示するようになります。現代においても、動物たちの姿や表情、行動などからインスピレーションを受けて制作活動を行う作家は少なくありません。

そこには、自然と動物に寄せる愛情、動物の姿・形などから触発された想像の世界、動物を通して見た人間や社会についての問題意識など、作家たちの様々な動物観、自然観、人間観が盛り込まれています。彼らのそうした動物に対する様々な視点は、自然と人間との関わりという会日的な問題について私たちが考える際に、多くの示唆を与えてくれるでしよう。

この展集会は、動物をテーマとした日本近・現代の絵画や彫刻85点によって、作家たちがどのように動物たちを見つめ表現してきたかを検討し、動物と人間、あるいは自然と人間との関係を見直す機会にしようとするものです。

最後に、この展覧会を開催するに当たり、貴重な作品をご出品いただきました美術館、所蔵家の皆さま、ご協力いただきました作家の方々、その他関係各位にあつくお礼申し上げます。

1995年4月
三重県立美術館

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