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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1989 > ごあいさつ 三重の近世絵画展図録

ごあいさつ

三重県はかつての伊勢国・伊賀国・志摩国・紀伊国の一部からなっていますが,近世には,上方と江戸とを結ぶ交通の要衝に当り,また全国でも有数の経済活動の活発な地域として発展しました。そうした繁栄を基盤に文化がはぐくまれ,優れた画家がこの地域で活躍しました。池大雅・曾我蕭白・月僊・増山雪斎・青木夙夜・韓天寿などはその代表的な人物といえるでしょう。

与謝蕪村とともに南画界の双璧といわれる池大雅,あるいは奇想に溢れた特異な美意識が近年になって急速に再評価されてきた曾我蕭白は,いずれも木地を京都においていましたが,しばしばこの地方を訪れ,彩管を揮いました。なかでも蕭白がこの地方に残した作品には,蕭白の全画歴においても重要な位置を占める作品が含まれています。この展観には,蕭白自身の作品に加えて,蕭白と交友を結んだ伊勢地方のひとびと.根付師として著名な田中岷江,僧頑極,津藩の藩儒で伊藤東涯門の儒者奥田三角とその兄龍渓に関係する作品も出品されています。

月僊は伊勢寂照寺に住んだ画僧で,社会事業家としても知られています。増山雪斎は伊勢長島藩の藩主である一方多才多芸の文人としても活躍しましたが,画家としても優れ,南蘋派系の美しい花鳥画で知られます。京都に生まれ,のちに伊勢松坂の豪商中川家を継いだ韓天寿,彼と従弟で池大雅に師事した青木夙夜は書家あるいは画家として近世後期の文化史に足跡を残しています。

この展覧会は,当館の所蔵品を中心に,これら三重県ゆかりの画家の作品を展示することによって,三重県の近世絵画の一端をあきらかにしようとするものです。

最後に,この展覧会の開催にあたり,貴重な作品をご出品いただいた各博物館および所蔵家の皆様をはじめ,ご協力を賜った関係各位に厚くお礼申し上げます。

1989年7月

三重県立美術館
三重テレビ放送

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