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美術館 > 刊行物 > 学芸室だより > 新聞連載 > 津と京都「近くて遠い」関係 井上隆邦 学芸室だより

津と京都「近くて遠い」関係

井上隆邦


新名神高速が開通して一年以上が経過した。津・京都間の移動が随分楽になった。車を飛ばせば、津から京都まで片道1時間半程度。先日のゴールデン・ウイークも嵐山の新緑を満喫してきた。新名神経由の、津・京都間の定期バスも賑わっているという。

予想を超える“恩恵”だが、半面、別の課題が浮上した。津に居ては案外、京都に関する情報が入りにくいのだ。京都の台所、錦市場の旬の食材、宮川筋に最近開店した人気のお店、イベントの数々、こうした情報が津でもリアルタイムで入手できれば、タイミング良く、京都へ行け、便利なのだが。

一体なぜ、京都の情報は入り難いのだろうか。素朴な疑問が浮かぶ。無論、様々な要因もあろうが、大きな要因の一つはメディア圏のブロック化であろう。津は東海圏に、京都は関西圏に帰属しているので、京都の情報は制度上、津には流れ難い。逆もまた然り。津と京都の間には、“近くて遠い”という奇妙な関係が成立している。

こうした関係は、美術館で仕事をしていてもたびたび経験することだ。津の県立美術館で展覧会を開催する際には、観客動員の観点から出来るだけ近隣の滋賀、奈良、和歌山、京都といった地域にも情報を流したいと思う。だが、メディア圏の違いから情報は思うようには流れない。

人々の行動範囲が拡大し、求める情報が多様化する中、メディア圏という枠内では対処が困難な課題が顕在化しつつある。インターネットがこの課題解決に一役買っているものの、それだけでは不十分だ。目に見えない、“情報の道”の整備が重要であることは言うまでもない。


(美術館連絡協議会ニュース 2007年1月号)

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