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美術館 > 刊行物 > 学芸室だより > 新聞連載 > 松阪牛革ブランド、目から鱗 井上隆邦 2010

筆者別原稿一覧井上隆邦

松阪牛革ブランド、目から鱗

井上隆邦

「牛革の松阪ブランドを計画してはどうか。」これほどユニークな提案をする人は滅多にいない。“目から鱗”とは、このことを云うのだろうか。

提案したのは、国際的に活躍する和太鼓奏者、林英哲さんだ。英哲さんにとって和太鼓は自分の分身にも等しい存在。太鼓の胴に張る牛革に常日頃から神経を使っていることは云うまでもない。特に牛革は音色を左右するだけに英哲さんはその選択に人一倍気を遣う。

なぜ、松阪牛の牛革が良いのか。英哲さんによると、松阪牛は“お肌”のマッサージが程よく成されており、良質の牛革が採れるという。“お手入れ”のお陰でキズが少ないのも特徴の一つとか。難を云えば、脂肪分が多少多いとのこと。確かに松阪牛は“霜降り”が多いので、英哲さの指摘は理に叶っている。

牛革の様途は幅広い。バッグに財布。ジャケットに革張りのソファー。数え上げれば、きりがない。無論、松阪牛といえども、その革は既に市場に出回っているだろうが、これを敢えてブランドとして“囲い込み”、発信するというのが英哲さんのアイディアの面白いところ。

昨年の秋から冬にかけて、当館で三重県出身の女性イラストレター、大橋歩さんの大回顧展を開催したおり“友情出演と云った形で英哲さんが、美術館のエントランス・ホールで素晴らしいコンサートを披露してくれた。公演がはねた後、彼と雑談していると、くだんのブランド話がひょっこり飛び出した。

如何にも、アーティストらしい、斬新でユニークな発想ではないだろうか。


(朝日新聞・三重版、カフェ日和 2010年1月19日掲載)

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