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美術館 > 刊行物 > 学芸室だより > 新聞連載 > ブログの影響力 落とし穴も 井上隆邦 2010

ブログの影響力 落とし穴も

井上隆邦


情報伝達手段として、最近とみに注目されているのがブログだ。ブログはデジタル化された日記であり、文字情報のみならず、解像度の高い写真も掲載できるので、その威力は凄い。ネット上に開設されているブログの数や膨大なものだ。人気のブログともなれば、アクセス数は数万単位とか。影響力のほどが伺える。

ブログの中には展覧会の紹介や批評に特化したものもある。この手のブログで有名なのは”弐代目・青い日記帳”。話題の展覧会についての最新情報や切れ味の良い展覧会評が掲載される。どの展覧会に出かけようか-。一寸迷った時にはこのブログが大いに役立つという。

過日、秋田県立近代美術館の河野元昭館長と雑談していたところ、興味深い話を聞いた。今でこそ伊藤若冲(じゃくちゅう)は、江戸期の奇想の絵師として若者の間では絶大な人気だが、館長によれば、若冲人気の火付け役となったのは意外にもブログとか。ブログで若冲が話題となるや情報が瞬く間に拡がり、たちまち若者の人気を獲得したという。河野館長の東大寺代の教え子がこの辺の事情を研究し、論文を纏めている。

ブログのお陰で若冲に対する関心が高まったこと自体、大変結構なことだが、手放しで喜べない現実もある。若冲の、”冲”の字を”沖”と勘違いし、”わかおき”と読む若者も現れたとか。

ブログは確かに便利なツールだ。情報の伝達速度も格段に速く、不特定多数の人々に向けて発信できる。しかし一つ間違えると、怪しく、不正確な情報が出回り兼ねない。落とし穴に注意しながら、使いたいものだ。


(朝日新聞・三重版、カフェ日和 2010年4月24日掲載)

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