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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > Hill Wind (vol.11~24) > 日本彫刻の近代 美術館ニュース Hill Wind 16(2007年10月)

日本彫刻の近代 明治期から1960年代まで-日本彫刻100年の歩み

「日本彫刻の近代」と題されたこの展覧会は全部で5つの展示室を使い、大小あわせて97点の彫刻を紹介しています。展覧会としては大規模な方でしょうが、100年間におよぶ日本彫刻の歴史を多角的に伝えるには、この規模でも不十分かもしれません。また、出品作品と全体構成は共同開催館の担当者と幾度も検討を重ねた上で決定しましたが、いざ展覧会が始まると至らぬ点が目についてしまいます。

 

たとえば、「国家と彫刻」と題された第2章は、明治政府による近代国家建設と彫刻とが密接に関わっていたことを紹介しています。対象作品の多くは屋外に設置された彫刻です。当然ながら、それらを展覧会に出品することは不可能です。そこで関連作品と高村光雲らによる東京・上野公園の《西郷隆盛像》や皇居前広場の《楠木正成像》など代表的な作品の写真パネルを展示しましたが、展示としては物足りません。関連する文献史料なども加えて、もう少し展示内容をふくらませる可能性を探るべきだったのではないかと考えるとやや心残りです。

 

また、第6章の「新傾向の彫刻」は、近年注目を集めている1926(大正15)年に結成された団体「構造社」の作家たち、大正期新興美術運動の中で生まれた作品などを紹介しています。ここでも、齋藤素巌ら割愛した作家たちのこと、関東大震災後につくられた建築関係の立体作品の紹介を展示に盛り込めなかったことが気がかりです。

 

このように反省点は、多々あります。しかし一方で、展示スペースや作品借用、開催経費等などの制約がありますから、こうしたことを全て盛り込むことは現実的には不可能かもしれません。それが展覧会をつくる難しさでもあり、同時に面白さでもあります。

 

ある新聞の展覧会紹介記事で、この展覧会は日本近代彫刻の通史をまとめる上での「たたき台」になると評されました。本展をステップとして、さらに吟味を重ねた展覧会が他の美術館で将来開催されないかと内心期待をしているところです。(Mi)

※この記事は2007年10月16日発行「Hill Wind 16」に掲載されたものです。
 
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