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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > Hill Wind (vol.11~24) > 第3室 三重の近世絵画 美術館ニュース Hill Wind 13(2006年11月)

第3室 三重の近世絵画

江戸時代の文化の中心が、豊かな伝統や経済力をもった京や大坂、江戸などの都市であったことは疑う余地がありません。しかし、交通の発達や伊勢参宮の流行、伊勢商人による経済的発展などを背景に、この地でも充実した文化活動が展開されていました。文化人を迎え入れ、都市からもたらされた文化を吸収しうる土壌もありました。同時に、各地の文化人を引き寄せる魅力を備えた地元の文化人の存在も忘れることはできません。

 

伊勢長島藩主・増山雪斎は、書画、詩文、茶などを広く嗜み、周辺に集まる多くの文人墨客の庇護者としての役割をも果たしていました。・瘢ヨの絵画作品は、中国人画家・沈南蘋の影響をうけた花鳥画が多数を占めています。当館で所蔵している作品も、雪斎の特長がよくあらわれた花鳥画が、一方で、山水、人物画にも優れていたことは、当館で1993年に開催した『江戸の風流才子 増山雪斎展』でご紹介したとおりです。

 

また、当館の近世絵画コレクションにおいて、上述の雪斎、第4室でご紹介する曾我蕭白とともに忘れてはならないのが江戸時代の最も知られた画僧のひとり、月僊です。生まれは尾張国ですが、伊勢古市の寂照寺再建を命ぜられ、伊勢の地で歿しました。寂照寺復興の費用を得るため、数多くの作品を描き遺しています。この濫作がもとで画家月僊の評価は必ずしも高いとはいえません。しかし、円山派を基本として、他流派の描法やあるいは西洋、中国の画法をも意欲的に取り込んだ興味深い作例ものこっています。

 

 さらに、第3室には、第4回三重映画フェスティバルで上映される「山中常盤~牛若丸と常盤御前 母と子の物語~」にちなんで、古浄瑠璃の復讐話を絵画化した、《堀江物語絵巻》(個人蔵)を特別展示いたします(「絵巻が結ぶ“新たな出会い”」参照)。《山中常盤絵巻》と同じく、「浮世絵の開祖」といわれる岩佐又兵衛がその制作にかかわったとされる、極彩色の絵巻の世界をどうぞお楽しみください。

 

(Mm)

※この記事は2006年11月7日発行「Hill Wind 13」に掲載されたものです。
 

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月僊《東方朔図》

月僊《東方朔図》

小津家寄贈

 

 

増山雪斎《孔雀図》

1812年

 

増山雪斎《孔雀図》 増山雪斎《孔雀図》

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