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第1室:宇田荻邨―《山村》を中心に―

今回の展覧会では、三重県立美術館の所蔵作品から、〈日本画〉−便宜上、江戸時代の絵画も含んでいます−を紹介してゆきます。1982年秋の開館以来、常設展あるいは企画展で所蔵作品を紹介してまいりましたが、〈日本画〉のみでひとつの展覧会を構成するのははじめての試みです。HILL WIND13号では、「〈日本画〉の魅力にせまる―宇田荻邨《山村》、80年ぶりの公開へ―」特集号として、各展示室のみどころをお伝えします。

 

まず、第1室は、標題にもその名を掲げた松阪出身の日本画家・宇田荻邨です。荻邨は、「静かな風格」をもつ京都の風物を愛し、生涯、京洛風景を描き続けました。清澄な画風で知られる荻邨ですが、本格的画壇デビューとなった第1回帝展入選作の《夜の一力》(1919年)や、《太夫》(1920年)、《港》(1921年)、《木陰》(1922年)など、当時の京都画壇、特に、国画創作協会の画家たちの影響を受けた、退廃的で暗鬱とした雰囲気のただよう作品ものこしています。その後は、中国絵画や南画、やまと絵、室町障壁画など古典絵画研究の成果のあとが色濃くのこる《巨椋の池》(1924年)や《山村》(1925年)あるいは、日本画家としての地位を確たるものとした、装飾的傾向の強い《淀の水車》(1929年)へとその作風は変化をみせました。さらに戦後、《祇園の雨》(1953年)を経て、清澄で優美な独自の画風を確立してゆきます。

 

三重県立美術館では、三重ゆかりの作家として、開館当初から荻邨を重視し、収集にも力を入れてきました。近年では、初期の代表作《巨椋の池》、昭和前期の代表作のひとつ《竹生島》(1932年)が岡田文化財団より寄贈されています。また、昨年、第6回帝展出品ののち、80年近くも行方知れずとなっていた幻の名品《山村》の所在が判明し、新たに当館のコレクションに加わりました。帝展で特選を得た《山村》は、荻邨の画風転換期にあたる重要な作品であるにもかかわらず、これまで、当時の白黒図版と当館所蔵の大下絵から類推するしかありませんでした。この《山村》が当館のコレクションに加わったことで、荻邨コレクションが一層の厚みを増したことはいうまでもありません。

 

また、当館では、本画だけでなく、大下絵や写生帖なども所蔵しています。これらの資料類も加えると、当館所蔵の荻邨作品で、荻邨の画風変遷を振り返ることが可能です。荻邨生誕110年を迎える今年、改めて、荻邨の画業をふりかえることの意義は大きいといえるでしょう。

 

(Mm)

 

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年報 〈日本画〉の魅力にせまる

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