このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

ひる・とおく

 毎年夏になると、全国各地から大学生たちが、博物館実習の単位をとるために、当館にやってくる。本気で学芸員をめざす学生も少数いるが、ほとんどは一生使うことのない資格収得目当てである。しかも希望者の数は年々増えている。問題なのは、美術館には指導のための特別な体制がないことであろう。学芸員は、夏には、秋の企画展覧会の準備に多忙で、時間的余裕などまったくない。学芸員の働く姿を見て学ぶというのが理想であるが、現実にはそううまくゆかない。美術館で何をしてよいのか、彼らは分からないし、また、勝手に動かれても困る。そのため、学芸員が時間をかけて手はずを整えねばならない。正直なところ、これは学芸員にとって大きな負担である。そのために、東京のある美術館では、驚くべきことに、実習生に館内の喫茶店のウエイトレスをさせた例があると聞く。物見遊山で参加する大半の学生も元凶の一因であるが、大学側の姿勢にも問題がある。つまり、教官は実習の現状を把握していない場合が多いし、「学生にどんな雑務をさせてもらっても構いません」とくる。揚げ足を取るわけではないが、本当にそう考えているのなら、大学校舎の掃除でもさせればよい。しかし、つまるところ、資格を乱発する現在の制度自体に問選がありそうである。私案であるが、実習受講者を、大学院修士課程修了見込者に限定してはどうか。とはいうものの、当館では、これまで、かなり丁寧に実習指導を行ってきた。大学の思惑はともかく、美術館としては、一人でも多く「美術館とは何か」を身につけてくれる若者に期待しているからである。  

 

(中谷伸生・学芸課長)

ページのトップへ戻る