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ひる・とおく

 福島県立美術館とわが館との共同企画、「関根正二とその時代」展の準備のため、四年前の蒸し暑い夏の日に、東京を駆け回っていたときのことである。

 

 銀座、日本橋、渋谷と歩き疲れて、池袋駅の地下にあった安レストランに入って、一人で夕食をとった。何だか汚なくて薄暗い店であった。そこでは一番高い2500円のステーキランチを注文したところ、ウエートレスが、「どのように焼きますか?」と不意を突くように開いてきたので、当方、思わず「やわらかめに」と答えた。彼女は何やらにやにやしながら、私の席のすぐ後ろにある調理場に行って、料理人に「やわらかめだって。うふふ・・・」と笑いながら、しかも当方の言葉を不正確に告げていた。その声が、衝立越しに、こちらにはっきりと聞こえてきた。「やわらかめに」という言葉もさることながら、大阪育ちの当方の関西なまりがおかしかったらしい。学生時代に、パリのレストランで、ステーキを注文して、下手なフランス語で、「セニョン」といったときでさえ笑われなかったのに、である。

 

 こうしたことは、東京ではしばしば経験する。グロテスクと思えるほどに、どこまでも関西弁で押し通そうとする大阪人のプライドの高さも嫌いだが、地方を見下すような東京人の傲慢さも鼻持ちならない。これだけの話なら、たわいもないが、都会の美術館が地方の美術館に対して似た態度をとる場合があるので、ときどき憤慨する。新聞社や出版社などのジャーナリズムもまた同様である。

 

 東京一極集中の弊害が叫ばれて久しい。しかし、日本中をよく見渡してみると、こと美術館活動に関しては、地方美術館の努力と頑張りが目につくこの頃である。十年前の状況とは、かなり違ってきていることがよく分かる。さまざまな展覧会、共同企画、普及活動、それに研究活動など。近年、地方の美術館の充実ぶりには目を見張るものがある。われわれも負けずに、これからも頑張りまっせ!

 

(中谷伸生・学芸課長)

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