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向井良吉「発掘した言葉」

1958(昭和33)年 ブロンズ 高さ73.0cm

 

 まずは、何かの植物と見えるだろうか。台座からまっすぐ幹がのびあがり、上の方で、球をふたつに割ったというか、喇叭のようなかたちが三方にみっつ、横に開いている。正面にも小さな喇叭型がひとつある。

 

 喇叭の開きが水平に向いていることから生じる方向性は、それがみっつあるため、作品に空間の座標軸としての性格をはらませている。他方曲面は、空間を拡散させてしまわないだけの張りを有しており、むしろ、ひろがりを口の内部の虚にとどこおらせ、それぞれに響きあわせる。

 

 水平の喇叭型が生む響きを保証するのは、しかし、何よりも幹の垂直性である。水平であるために必要なだけの高さを与え、そして、口の開きの起点となりまた終点たらしめるのが、水平に垂直が交わることで生じる緊張なのだ。

 

 さらに、バリを残し、裂け、破れた不規則な表面が、作品を水平と垂直の組みあわせにとどまることから救っている。まさに植物ないし直立するものとして人間のように、幹がおい育ち、喇叭様に開花し、空間を響かせる。その意味で、バリや破れは単なる表面処理ではなく、構造にまで及んでいるといえよう。ただし、裂け破れた虚がもたらす腐蝕や崩壊といった連想、左右相称による正面性とあいまって、イメージが硬質な金属として定着されたため、幹がおいたち、開花、空間の交響にいたる時間は、現在進行中の過程ではなく、過去に完了したものとして呈示されている。  

 

(石崎勝基・学芸員)

 

年報/向井良吉展

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