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中谷泰(1909−1993)「陶土」

1958年(昭和33)油彩、キャンバス112.1×145.5p 三重県立美術館蔵

 

 画面を大きく支配するのは、陶土を採取した結果できた巨大な穴である。水が溜まったり、光によって生じた明暗といった、様々な表情を見せる土の微妙な色彩の変化が魅力的である。

 

 明治42年、松阪市に生まれた中谷泰は、戦前から戦後、静物画の表現に腐心していたが、昭和29年7月、和歌山県の有田川で発生した大水害の現地へ取材し、被災農民の複雑な心情に接し、彼らの思いを形象化しようと試みたのが「農民の顔」であった。

 

 一人の農民の背後に被災地の状況を描いた「農民の顔」から風景画、特に土への興味を抱き始め、昭和30年頃から炭坑町や工場、陶土採掘場をモティーフとした風景画を制作、知的情趣に満ちた茶系の色彩と独特の画面構成によって、中谷の画業を代表する作品群となっている。

 

 おびただしいスケッチをもとに、中谷泰は画面構成に必要な「もの」を必要な形態と量塊を持たせて配していく。画面に登場する個々の「もの」は現実に存在するが、この「陶土」の実景は、もう中谷の心の中にしか存在しない風景となっている。

 

(森本孝・学芸員)

 

年報/中谷泰展

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