このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

ひる・とおく

 三重に県立美術館が誕生して、今秋で5年目を迎えた。そろそろこの美術館が、県民の意識の中でどのように映っているのか、館側がつくり出す展示内容にどのような反応を示しているのか、むつかしい問題ではあるが、経済効果はどうなのかなどを検討する好機かとも思う。

 

 開館しばらくの間、県民の美術に対する渇望がどっと堰をきって流れるかのように、わずか半年足らずの間に実に23万人近くの入館者が訪れ、関係者を驚かせたものである。その後、年間12万人ぐらいのペースに落着いてきているものの、本県の都市配置や美術館が立地している津市人口の集積からみても、この人館者数は、全国的にも上位にランクされる。

 

 もちろん美術館活動の成否を入館者数だけをとらえて評価することは早計であろう。むしろ入館者がどれほどの満足感を味わい、それが県民の文化意識の高揚にどれだけ役立ったかの分析に評価のカギがある。といってもこれを経済学のモノサシで定量的に分析することは容易ではない。

 

 かつて国立民族博物館が、NIRA(総合研究開発機構)に委託して「文化施設の経済効果」を研究したことがある。その中で、民博見学の値打ち(満足度)を、一泊旅行、観劇もしくは音楽会、映画、文庫本、コーヒーとランク分けし、印象評価をさせているが、思いのほか、観劇・音楽会よりやや高い値打ちのところに答えが集中していたことは興味深い。

 

 いままでは、文化は金では買えない、経済よりもっと崇高なものだという考えが支配的であったかもしれない。しかし、人間が健康を維持するため栄養を摂り、スポーツに親しみ、医者に診てもらうように、豊かな心を養い、生きる喜びを味わうといった文化的欲求を充たすためにも相応の支出を伴って当然であるし、今後いっそう人びとの意識も深まっていくであろう。

 

 今秋、開館5周年を記念して展覧を予定している「プラハ国立美術館所蔵品展」と「曽我蕭白展」。いままでの集大成のうえにたってのこの二つの企画展に村し、入館者はどういう受けとめ方をするか、何らかの定量的把握ができないものかと思っている。

 

(橘重蔵 三重県立美術館次長)

ページのトップへ戻る