SEKINE Sho(-)ji // Group of People // 1916 // Charcoal on paper
Self-portrait // 1918 // Ink on paper
『群像』では、ある評者が別の失われた油彩について述べたのと同様に、群衆を個々の人間の集まりとしてではなく、「群衆それ自体一つの存在として把握し」ている。波打つ線と擦筆による明暗の統一に、関根の素描家としての伎倆がうかがわれる。
また「農民の強訴のよう」とされる顔面には、農村出身者としての関根を、そして彼とその周辺が社会主義に抱いていたという関心、を読み取ることができるかもしれない。
木炭による『群像』に村し、『自画像』では関根のペン画持有の、鋭利な線が見られる。但し、今回の関根展に出品された油彩自画像の下絵として制作されたためか、他のペン画に比ペると筆勢は抑えられている。両目と唇には薄く褐色が塗られており、眉の無いことと相俟、静かな異様さが感じられる。彼の油彩人物画で、昏が常に真っ赤なのを思い出そう。ある論者がこの作を、『女の顔』と考えていたのも頷かれよう。
(学芸員 石崎勝基)
年報/関根正二とその時代展
作家別記事一覧:関根正二
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『群像』1916年 木炭・紙 54.5x39.5cm
『自画像』1918年 インク・紙 26.8x19.2cm
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