1919年 油彩・キャンヴァス 26.0x34.8㎝
大正8年(1919)の2月、東京は年来にない大雪に見舞われたが、その厳しい天候はかえって黒田を触発し創作へと駆りたてたようである。その年の冬、彼は麩町平河町にある養父黒田清綱邸の前庭に降り積る雪景を数点制作している。フランス留中から雪景色は画家を魅了したモティーフであったらしく、1893年のパリ・アンデパンダン展にも《ロアン河辺の雪景》と題する作品を出品したりしている。ただ黒田の雪景への関心は雪の降る様にはなく、雪のもつ白い色が冬の日の周囲の景色や光線、森閑とした空気に包まれた外界の諸要素を反映して、微妙に変化するその「うつろいやすさ」にあった。そのために彼は、私淑していたむ印象派の画家達が矢張りそうした様に、小さな画布にオイルスケッチ風の、小品を同じ視点から描く作業を毎年繰り返しためである。
(荒屋鋪 透・学芸員)
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