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開館記念展を振り返って

山口泰弘 (学芸員)

 

 ようやく開館に漕ぎつけた、しかし人が来てくれるだろうか。はたしてどのような批判が返ってくるのだろうか。大さな満足感と一抹の不安感をない交ぜにして、9月25日をむかえまし仁。当日、私たちの不安を一層かきたてるように、台風16号の余波をうけて外はあらし模様。午前中鈍かった出足も午後になって風雨がおさまるとともにしだいにのび、この1年でおよそ1,300人の来館者をみることができました。まずまずの好スタートといえるでしょう。

 

 こうして幕を切った開館記念展「サンパウロ美術館展」は、26日間の期間中に71,000人あまりを集めました。数字だけで展覧会の成功不成功を判定してしまうことはもちろんつつしむべきことであるにちがいありませんが、美術館の所在する津市がわずか14万人弱という県庁所在地としてはかなり小規模な都市であること、同じような小都市が全県域にばらまかれていて人口動員が大都市ほど容場でない地方のことを思うと、この数字はこの展覧会、あるいは美術館に対する県民の関心がどれけ高いものであったかを知り、また開館の成果の第一報を伝える材料のひとつとしてあげてよいのではないでしようか。 開館記念展として「サンパウロ美術館展」にひき続き、「日本近代の洋画家たち展」が催されました。前者ではヨーロッパの近世以降の絵画の、後者では日本の近代洋画の、ふたつの通史が開館記念としてはちあわせになったわけです。一般的な反響の大きさは前者にゆずるとして「日本近代の洋画家たち展」は私たちの美術館の基本姿勢を明らかにする上で重要な企画であったといえます。この展覧会を企画し、準備を進めていく段階でいくつかの批判、たとえば、“単なる名品主義”といった批判ないではありませんでした。しかし、この企画は、当館の収集方針とあいまった、長期的展望に立った展観プログラムを総括する、いわば序章として、私たちの美術館の性格と今後の活動方針を示す指標の役割を担っていたのです。この序章に続く各論として、私たちは、58年度の最初の展覧会に近代洋画の巨匠藤島武二を採り上げ、現在準備を進めています。

 

 開館以来3ヶ月に満たない12月19日、はやくも10万人を突破しました。人が来てくれるだろうかという不安はひとまず杞憂に終りました。しかし、地元に本格的な美術館ができた、そしてそれが身近かなものであるということが実感として人々の身につくまで、おそらく長い時間がかることでしょう。

 

 

サンパウロ美術館展・解梱風景

サンパウロ美術館展・解梱風景

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