ホセ・サンレオーン(第2室)
第2室に入って、むかって右手にならぶのはホセ・サンレオーン José Sanleón(1953年、バレンシア州カタッローハ生まれ)の絵画、左手にはジョアン・カルデイス Joan Cardells(1948年、バレンシア生まれ)の素描が壁にかけられています。
サンレオーンは、80年代の後半には、激しい筆致と物質性を強調した質感をしめす、表現主義的な絵を制作しています。その後、迷宮やマンハッタンをテーマに、より厳格な構成をしめすようになりました。ただその際でも、素材の物質としての質感は、つねに大きな比重を占めていました。
今回展示される4点の近作も、例外ではありません。画面の構成だけとれば、水平と垂直の区画によって画面は分割されています。しかし絵の表面はぺらぺらと波打っていたりしわがよっていたり、厳格な構成と見えたものも布をはっつけてあるのだし、白い部分はずいぶん粗っぽい塗りな上に、落書きのような文字もあればニューヨークのビルや人(自画像です)、昔の絵からとった写真が刷りこまれ、あげくのはてにテントをとめるための孔がならんでいたりする。色も決してきれいなものとはいいがたく、黒、白、ベージュといった地味なものです。
これらの作品は、枠どられた純粋な平面上で構成された抽象絵画などではなく、むしろ、画面の内側をきちんと構成しようとする意志と、それにあらがい、外側からさまざまな力を侵入させようとする素材との、交差と争い、そして緊張によってなりたっているといえるかもしれません。
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