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美術館 > 刊行物 > 年報 > 1997年度版 > 年報1997 <移動>展ガイド アンヘレス・マルコ(第3室)

アンヘレス・マルコ(第3室)

 第3室にはアンヘレス・マルコ Ángeles Marco(1947年、バレンシア生まれ)の彫刻が展示されています。マルコの仕事は、スペインにおけるポスト・ミニマリズムを代表するものという風に形容されることもあります。ここに展示された作品もそうですが、その見かけは一見、どこかの工事現場か、工場にあるのがふさわしそうなそっけのないもので、その意味でいわゆるミニマル・アートとの関連をうかがわせます。しかし形はあくまで媒体であって、そこにはつねに、何らかの観念的なテーマ設定がなされているのです。ところがそうした観念性は、今度は形の簡素さによってひきもどされ、作品を単なる観念の絵解きには終わらせないだけの、緊張感を宿らせることになります。

 今回展示された作品も、<通行>という連作に属しています。通行とは、一つの状態から別の状態への、一つの場所や経験から別の場所や経験への移行をさし、そのためにマルコは、通路や橋、はしごといったイメージを用います。ここでも、三点の彫刻はそれぞれ、高速道路、歩道、トンネルを発想源としているようです。『高速道路』と『歩道』では、ある中心に落ちつくのではなく、どこかに延びようとする、しかもパーツのくみかえによって形を変更することもできそうなその外観は、見る者の視線を、その経路にそって移動させるような、一種の通路として機能しています。それでいて、それぞれの作品の内側をのぞきこむと、アスファルトだか油脂が塗ってあって、外側の形にそって動こうとする視線は、その速度にブレーキをかけられてしまいはしないでしょうか。そして通行という時、どこからどこへいき、通行のための場所はどんなところに位置しているのでしょう?

 また、この展覧会の初日、マルコはこの部屋で、あるパフォーマンスをおこないました。このパフォーマンスもまた<通行>の連作の一つで、その移動の跡が、会期中展示室に残されます。

シンポジウムより、1997.10.26
アンヘレス・マルコ

「今回展示する彫刻は、<通行>の連作に属しています。通行というテーマは、ある段階から別の段階へ、ある経験から別の経験への移行、また、化学変化をふくむイメージをとおしての通行に言及するものなのです;そうして、液状化したアスファルトの化学変化のように、『歩道』や『高速道路』といった作品がそうであるように、ピース間での視覚的な語り、相互関係と配置、開かれた機能、相互交換の可能性を作りあげるのです。

 作品『裏』は、プラトーンの洞窟の神話によって規定されています。この神話は、私たちが実在の影の内に捕らわれて生きていること、しかしおそらく、芸術をとおして、そうした隷属から自由になることができ、認識の光にむかって変化することをも暗示しています。

 アクション=パフォーマンスについてのべれば、パフォーマンスは、『運命の秋に』再生しようとする欲望というテーマを扱っています。そこでは秋の象徴として枯葉、花、動く彫刻としてのケープを用いることで、自然を、歩きまわり移動することにさらし、後には消えうせ、造形的に彫刻の生成を成就しようとするのです」。

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