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美術館 > 刊行物 > 年報 > 1997年度版 > 年報1997 <移動>展ガイド カルメン・カルボ(第4室)

カルメン・カルボ(第4室)

 第4室には、カルメン・カルボ Carmen Calvo(1950年、バレンシア生まれ)のインスタレーションが展開されています。カルボはもともと、平面の領域で制作していた作家です。四角い画面に小さな点や短い線が群れつどい、形をなさぬままにひろがっていったり、逆に規則正しく配列されることもあれば、時に未知の文字のようになったり、あるいは風景や何らかの過去の絵画のイメージを浮かびあがらせたりしたのでした。ただし点や線は、キャンヴァスの上に絵具で描いたものだけではなく、粘土を焼いたものであったり、あるいはどこかから拾ってきた廃材であったりアトリエで用いられた道具であったりするのです。それらは糸で支持体に縛られ、当然、影を落としていました。 今回の作品はそうした平面上に集められていた物たちが、キャンヴァスの枠からはみだし、空間にひろがっていったものと見なしてよいでしょう。床の上に、円い木のテーブルの上に、あるいは木棚に、古い厚紙や絵筆や鉢や果物を石膏だかセメントでかためたものだの、錆びた鉄の重しや何かの装飾に使われていたらしき曲線状の板、割れた皿、古びた十字架や踏台などなどが、時にぱらぱらと散らされ、時にぎっしりとつめこまれて置かれています。それらはいずれも、自分たちがたどってきた、作られ、用いられ、捨てられ、放置された時間を宿しており、それらが見かけ上ニュートラルな展示室の空間につれてこられることで、ひそかにささやきを交わしたり、がやがやとざわめいていたりするのが聞こえてくるような気がしないでしょうか。

シンポジウムより、1997.10.26
カルメン・カルボ

「三重県立美術館で展示される作品は、1990年から1996年までの間にふくまれる時期のものです。

 三つの展示は、同じ記号の内に定義されます - すなわち、物です。

 『集成』(1990年)は、私がはじめて空間にはたらきかけた作品でした。各ピースは、固有のアイデンティティーを獲得することになります。というのは、それらは平面から外に出てきたのです。私の仕事はつねに、絵画的なものとして定義されます。三点の作品は、器とその中に入れられるものという理念から生まれました。素材はとても貧弱なものですが、一方、美術や工芸の世界で用いられてきたものでもあります。つまり、石膏やセメント、スタッコなどです。

 『集成』(1990年)は、私のパリでの生活環境から生まれたもので、ペール・ラシェーズ墓地が発想源です。地面におかれたそこでの石は、厨房図ないし舞台の仕掛けをなしていました。この作品は、バレンシアのIVAM・セントル・デル・カルメの空間のために制作されたものです。

 一方、『厨房』(1994年)は、光と影に投げかけられたまなざしであるということができるでしょう。この作品は、17~18世紀のスペイン絵画、とりわけサンチェス・コタンとスルバランに対して私が抱いた関心を視覚化したものです。

 『中心で』(1996年)の展示は、日常的なもの、この場合は、私の仕事場のインテリアであり、日々集められたものを収納することや、それらを運んでいくまなざしと感覚との忠実な反映なのです」。

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