4
北川民次 (きたがわたみじ/1894-1989)
海への道
1942年 油彩・キャンバス
北川民次は、パリの留学が主流であった大正初期、国吉泰雄や石垣栄太郎らとともに、アメリカで画家としての歩みを始めた数少ない日本人画家の一人。彼は20歳で渡米し、ニューヨークで絵画を学んだ後、メキシコに13年滞在し、美術教育に携わりつつ、いわゆるメキシコ・ルネサンスの画家たちから強い影響を受け、1936年の帰国後は、力強いメキシコ絵画を基盤にした独特の作風による作品を発表した。志摩半島波切の風景に取材したこの作品は、第29回二科展の出品作で、北川の作品の中ではむしろ珍しい、穏やかな色感と自然な描法とを示している。
北川は、セザンヌを高く評価し、ニューヨーク時代に、ルノワールを崇拝していた国吉康雄としばしば議論になったというが、この作品には、そうした彼のセザンヌへの傾倒の一端を見ることができる。
作家別記事一覧:北川民次