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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 1986 > ミニ用語解説:デッサン 荒屋鋪透 友の会だよりno.13(1986.11.5)

特集 ミニ用語解説:デッサン

デッサン(素描)は美術作品の創作過程において、その最も初期の段階に用いられる基礎的な「技術」であるが、ルネサンス以降、アルベルティやヴァザーリなどによって展開された『デイセーニョ(素描)論』にみられるように、単なる技術ではなく、その時代ごとの芸術のあるべき姿を規定してきた、重要な「概念」でもあった。

14世紀末からの紙の普及によって、チョーク、木炭といった道具が壁画制作から解放されると、素描は美術家教育のうえでも中心的な課程となる。またアルベルティ(1404-1472)がその『絵画論』(1435年)などの著作で、素描の役割を、自然の秩序を組織することにまで拡張し、レオナルド・ダ・ヴィンチが「素描は学問と教育の根本である」と述べたことを受けて、16世紀後半にフィレンツェでアカデミーを主宰したヴァザーリは、素描を「知的な能力によって事物の形態概念を認識する」方法にまで高めた。以後17世紀イタリアの美術教育においては、素描は絵画、彫刻、建築よりも優位に立つ、それらの基礎すなわち「素描芸術(アルティ・デル・ディセーニヨ)となっていたのである。一方こうした線描本位の絵画論への異議申し立ても、各々の時代にあり、ミケランジェロとティツィアーノ、プッサン派とリューベンス派、アングルとドラクロワの村立などに見られる、素描派と色彩派の論争がそれである。

(荒屋鋪 透・学芸員)

友の会だよりno.13(1986.11.5)

合体版インデックス 穴だらけの用語解説集
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