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〈美術館リニューアル〉−柳原義達記念館−

毛利伊知郎〈三重県立美術館学芸員〉

三重県立美術館では、彫刻家・柳原義達さんから彫刻70余点と素描130余点の他、関係資料の寄贈を受けて、それらの作品を常設展示する柳原義達記念館がリニューアル開館にあわせてつくられることになった。

1910年神戸生まれの柳原義達さんは既に齢93歳、佐藤忠良さん、先年他界した舟越保武さんより2歳年長で、佐藤さん・舟越さんとともに戦後日本の具象彫刻界に一つの頂点をなす彫刻家として高い評価を得ている。

その柳原義達さんは三重県と地縁の類があるわけではない。しかし、当館では日本の具象彫刻界を代表する作家の一人として、また三重県立美術館が準備段階で指導を仰いだ美術評論家・故土方定一氏と柳原さんが親しかったこともあって、柳原さんの代表作3点(《赤毛の女》《黒人の女》《バ・泣Uックのモデルたりし男》)を開館時に収蔵した。また、1996年に「柳原義達展」、1999年には「柳原義達デッサン展」を開催するなど、折りに触れてこの彫刻家の仕事に注目して紹介を行ってきた。柳原さんと三重県立美術館とのこうした関係、日本の近現代美術を主たる対象としてきた活動の在り方などを背景にして、関係の方々からご支援をいただいた結果、今回の作品寄贈と展示施設の実現に至ったわけである。

柳原義達記念館 建設途中 写真1

寄贈された彫刻作品は初期から晩年までの代表作を網羅していて、柳原義達の全体像を窺うに足りる内容となっている。また、大量の素描はこの作家の日々の営み、彫刻家としての姿勢を伝える作品であると同時に、何よりも素描として優れた表現を示している。今後、こうした寄贈作品は当館の彫刻と素描コレクションでの一つの核となるであろうし、様々な角度から光を当ててその魅力を展示紹介していきたいと考えている。

ところで、北海道立三岸好太郎美術館、宮城県美術館の佐藤忠良記念館などをはじめとして、その地方の出身作家を顕彰する個人美術館、あるいは記念館が地方自治体によって設置されるケースはわが国でも珍しくない。しかし、その地域と縁のない作家の常設展示施設が公立美術館につくられた例(静岡県立美術館のロダン館、豊田市美術館の高橋節郎館など)は、少数にとどまっている。

柳原義達記念館 建設途中 写真1

公立美術館においては様々な面で地域性と普遍性とが調和を保ちながら美術館活動が行われていくことが望ましいと筆者は考えているが、作品収集や展覧会等でいわゆる「ゆかり作家」「出身作家」とどのような関係を結んでいくかはデリケートな側面を持っていることも否定できない。もちろん、知名度にこだわらず、優れた作品を残している地域の作家を全国に向けて紹介していくことも重要な活動であるが、同時にその地域の作家の個性をより広い視野の中で検証すること、さらには時代や地域にこだわることなく優れた作家・作品を見出す努力も、地域性の重視とならぶ美術館の重要な使命ということができる。今回の柳原義達作品の受贈と展示施設の設置は、地域性と普遍性と関連する美術館活動についてのこうした基本的な考え方が根底にあってのことである。 ところで、この展示施設は美術館の東端に近いところにつくられるが、ロビーをはさんで大小2つの展示室を持つことになる。そのうち、大きい方の展示室では彫刻を中心とした展示が行われることから、約6mの天井高を持ち、昼間は自然光線を高窓から取り入れるとともに、最新の照明設備を駆使して彫刻の鑑賞に最適の環境をつくり出すことができるようになっている。この展示室で、人物・鴉・鳩を主モチーフに、自然の本質に迫ろうとする柳原義達の彫刻作品がどのような表情を私たちに見せてくれるか、今から大いに期待しているところである。

友の会だよりno.63, 2003.7.30

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