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陶芸作家深見陶治(ふかみすえはる)氏を訪ねて

来年、三重県立美術館は、創立20周年の記念の年を迎えます。その幕開けに陶芸、ファイバー、截金(きりがね)木工、と異なるジャンルから6人の作家達による「現代の工芸・伝統と革新―京都の6人―」が開催されます。

今回、その中のお一人、深見陶治氏のアトリエをお訪ねし、お話をお聞きすることができきました。

深見氏のアトリエは、京都市伏見区の住宅街にあります。深見氏の作陶にとって重要な助手を務める奥様が車で出迎えて下さいました。車中。深見氏が作陶の時の肉体疲労から突然足が動かなくなったとお聞きし、陶芸家としての厳しさを痛感しました。

深見氏の客間に通されると、青白磁の2点の作品が目に飛び込んできました。一点は波のような曲線のオブジェ、もう一点は同じ青白磁で刀剣のように凛として立っているオブジェ。その青白磁の眩いばかりの美しさ、静けささえも感じられました。早速、深見氏の作陶への姿勢、思いを語っていただきました。

「陶芸というと、美術の中で一段低く見られる傾向があるが、それはちょっとおかしいのではないかという思いがあります。陶芸が多くの国にある中で、日本は層も厚いし、実力も非常にレベルが高い。そして歴史的にみても、日本としての美意識を煮詰め、高めながら、ものを作ってきたのではないだろうか。その陶芸を世界に発信し続けゆきたいと思う。」

「ぼくは22年間日展に出品してきましたが、41歳の時辞めました。それは、日展の中で恵まれなかったからではなく、自分の足で歩きたかったから。痛みも喜びも全部自分のものとして受け取り、ある意味で、自分を崖っぷちに追い込んで全部を甘受しながら歩いてゆきたい、又歩くべきではないかと思うようになりました。日展には出品しながらも時として悩みがあり、その度に自分の中で、40才になったら結論をだそうというのがありまして、迷っている中、家族と共に大好きなイタリアで、何もしない3ヶ月の時間を持ちました。帰って来るとすでに日展の制作のシーズンでしたが、作れなくなっていました。」

―なるほど。

「陶芸の中で、いまはなくなりつつある魅力ある徒弟制度も重要なものではないかと思いますね。たとえば学校教育制度だけでは画一的なものになるのではないかと思っています。もう1つ陶芸のアイデンティティがそこのあたりにもあるのではないかと。私は陶芸としての造形の在りようを素材・焼き・プロセスという中で追求しています。いわゆる彫刻とは違うんですよ。私は、メッセージを持った抽象形体を陶の造形として作り上げたいんです。」

―素材を磁土に選んだのは、どうしてですか?。」

「家は磁器の染め付けをやっているいわゆる、窯元でした。そういうこともあったと思います。20歳の時、日展の初入選が、磁器の鉢物でした。次の年も磁器ですが。今度は落ち、4回目の出品でやっと2回目の入選ができました。その時の素材は土でした。その後、30歳位前に、作品についても、そして素材にも迷っていました。」

―どういうわけですか? 。

「どうも土に違和感があって、その迷っていた時に磁器が新鮮に見えてきたのです。そして、どのような作品をほんとうに作りたいのか、作ったらよいのか、その中で思ったのが焼きのがもつ歴史の中でどこをどう捉まえ、自分がつかみ取ってくるのかということを考えました。そして、それによって今を出す。」

―ところで、器物には魅力は感じなくなってきたのでしょうか?。

「そんなことはないです。どちらも魅力があります。ただ、今はオブジェの魅力が勝っているのです。もし、器をやりたくなったら僕はやりますよ。以前ろくろを片づけて、型を使ってオブジェだけだやった時期もありましたが、しかし、型の仕事だけではストレスが溜まり、精神上よくないのでろくろを使ったり、型を使ったり、揺さぶりをかけてやってきました。その方がよかったですね。型ばかりだと、追い詰められて、ふっと息を抜くところがない。24時間体制でやりますから、何時休んで、何時にやっているか分からなくなってしまうんですよ。そして緊張感と集中力をなくしてしまいますので……。」

石膏型から制作ですか 「まず、原型を半磁土で作り、それを元に石膏型を作ります。ろくろとはスピードも、制作の体勢も違います。いろんなことをくぐり抜けないといけないですね。面倒な仕事です。」

―今度の三重での展覧会で期待されることは何でしょう。

「美術館の展覧会はただ単に新作というのではなく、学芸員の方に、今までに制作してきた作品のなかでこれとこれを展示しますといってほしいですね。新作が必ずしも良いものが出るとは限らないし、前のが良いのかもしれない。それを作家の前に突きつけてほしい。今度の三重ではそれをやって頂ける。それから、他の作家たちの素材も違う作品の横でどう見えるか。そこで僕がどのように感じるのか、僕自身が楽しみです。」

階下のアトリエは、入り口近くにはろくろ、奥の部屋には型の仕事の木枠、石膏型、タンクが所狭しと置かれてあり、さらにその奥は電気窯の部屋になっていた。丁度、窯詰め前の作品が並べられ、施釉された作品や、鋳込みの型から外された作品は大切に埃よけが掛けられ、焼きを待っていた。氏の説明によると型での成形は圧力鋳込みという方法で行う。この技法は磁土の泥漿をエアーコンプレッサーの空気圧を使って型へ流し込む。圧は約3時間かけ続け、その後、肉厚がついた後の泥をさらに時間をかけて泥を抜く。従来の方法の圧力充填鋳込みでは、作品の厚み分に泥を流し込み、中空の部分をなく固めるが、氏の圧力鋳込みの方法は中が空洞となるので、泥を抜く作業も気が抜けない。その後、型から外し完全に乾燥させた後、タンガロイの刃、サンドペーパー等で表面を削る。これらの道具に徹底した工夫や改良が重ねられていた。「これらの型の仕事を京都と東京の大学で公開されましたが、なかなか後に続く者がいない。」とおっしゃる言葉が、製作工程の大変さ、緻密さを目の当たりにして理解できました。氏の徹底的に作品を追求してやまない情熱と気迫を実感しました。

(広報活動部)

 

深見陶治氏略歴

1947 京都市に生まれる
1965 京都市工芸指導所専科修了
1967 日展入選'84年展特選
1981 京都芸術新人賞受賞
1982 中日国際陶芸展大賞受賞'83年展
愛知県知事賞'84年展準大賞'85年展大賞受賞
1985 朝日陶芸展奨励賞受賞
明日をひらく日本新工芸展優秀賞・サンケイ新聞社賞受賞
1989 ユーロバリア'89ジャパン
昭和の陶芸―伝統と革新(モンス市立美術館・ベルギー)
1992 日本陶磁協会賞受賞
MOA岡田茂吉賞最優秀賞受賞
1994 クレイワーク展(国立国際美術館)
1995 ジャパニーズ・スタジオ・クラフツ トラディション・アンド・アヴァンギャルド展(ヴィクトリア&アルバート美術館・イギリス)
1996 毎日芸術賞受賞

友の会だより 58号より、2001.1.0

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